欧州

2024.06.01 10:00

ウクライナ、クリミアのフェリーターミナルも攻撃 補給線遮断は最後に「難物」

ウクライナ南部クリミア半島のケルチ海峡で、鉄道車両を運搬する貨物フェリー。2017年7月撮影(fifg / Shutterstock.com)

ロシア占領下のクリミアにロシア本土から大量の貨物を輸送する経路は限られる。海路、ケルチ海峡に架かるケルチ橋(クリミア橋)を通る道路と鉄路、ケルチ海峡を結ぶフェリー航路、そしてウクライナ南部から延びる鉄路だ。

ウクライナはこれらの補給線をひとつ、またひとつと攻撃してきた。最新の攻撃はフェリー航路を狙ったものだった。5月29日夜か30日未明、ウクライナ軍はATACMS弾道ミサイルでクリミア東部ケルチのフェリーターミナルを攻撃し、フェリー2隻を損傷させた。1隻は車やトラックの運搬用、もう1隻は鉄道車両の運搬用だったとされる。

損害は衛星画像で確認された。ウクライナ軍参謀本部は、このフェリーターミナルはロシア軍が「クリミアの部隊への補給に積極的に利用していた」と説明している

もっとも、ウクライナ南部に駐留するロシア軍がフェリーに輸送の多くを頼っていたのかといえば、それは疑問だろう。フェリーはかねて、もっと安全で大量に輸送できる手段のバックアップという位置づけだった。そして、最も安全で大量に輸送できる手段である南部の鉄道路線は無傷なのだ。この鉄路を破壊するのはきわめて難しい。

ロシアのフェリーが2隻爆破されたというのは、自由なウクライナの味方にとって朗報かもしれない。だが実際のところ、それはウクライナ南部のロシア占領軍にとって大きな打撃にはなりそうにない。

オーストラリア陸軍退役少将のミック・ライアンは、ウクライナによるケルチ橋などへの攻撃は「軍事的というよりも政治的なものであり、ロシア国民の前でプーチンにプレッシャーをかけるのが目的だ」と自身のニューズレターに書いている。

ウクライナ南部のロシア軍の兵站を狙うウクライナ側の作戦は、ロシアが2022年2月に拡大した戦争が進むにつれて規模が拡大し、手法も洗練されてきた。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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