「これを予想していた人は少なかったと思います」。ノルウェー王立空軍士官学校のクヌート・オーラ・ナースタ・ストレム准教授もX(旧ツイッター)にそう書き込んでいる。
スウェーデンのポール・ヨンソン国防相は、上部にレーダーを搭載し、高高度を飛行するサーブ340AEWについて、ウクライナに「空中と海上両方の目標に対する新たな能力」を与えるものになると述べ、ウクライナの「遠距離の目標を識別する能力が強化されるだろう」と続けている。
サーブ340AEWは北大西洋条約機構(NATO)のデータリンク規格「リンク16」にも対応しており、ウクライナ空軍に配備されるF-16戦闘機と安全にデータをやり取りすることもできる。
一方で、早期警戒機は非常に狙われやすい機体でもある。ロシア側では今年初め、全面侵攻の開始時点で8〜9機しか運用されていなかった貴重なA-50早期警戒管制機のうち、2機がウクライナ軍のミサイル攻撃で撃墜された。ウクライナ側はさらにA-50の製造・修理工場も攻撃している。
サーブ340AEWはA-50以上に攻撃を受けやすいかもしれない。ジェットエンジンを4基搭載するA-50が最高速度900km/h、実用上昇限度1万2000mであるのに対し、ターボプロップエンジン2基のサーブ340AEWは最高速度480km/h、実用上昇限度7620mにとどまる。
A-50の搭乗員はウクライナ軍のミサイルをかわすのに苦労した。サーブ340AEWの搭乗員はもっと苦労するかもしれない。ウクライナ側にとってさらに悪いことに、ロシア空軍はこの戦争で最も強力な空対空ミサイルである射程320kmのR-37Mを配備している。
両国の国境付近を飛ぶロシア空軍のMiG-31BM迎撃戦闘機は、R-37Mでウクライナのほぼすべての空域を脅かすことができる。英王立防衛安全保障研究所(RUSI)のジャスティン・ブロンク研究員らは「R-37Mは射程の長さに、MiG-31BMの非常に高い性能と高い運用高度も相まって、ウクライナ軍機を脅かす大きな自由を得ている」と解説している。