カナダのOSINT(オープンソース・インテリジェンス)研究者、ステファン・ワトキンスが最も簡潔にその理由を言い表しているかもしれない。「ロシア軍はA-50を1機失うごとに探知能力が低下し、ウクライナの空域を監視できなくなっている」
ロシアが2022年2月にウクライナに全面侵攻したとき、ロシア空軍は9機のA-50を運用していた。A-50はエンジン4発搭載のイリューシンIl-76輸送機がベースになっており、機体上部にレーダードームがあり、最大15人の乗員と戦闘管理者が乗り込める。
米空軍のE-3早期警戒管制機のようなA-50は、敵機やミサイルの探知で広範囲をカバーするために前線の後方を飛ぶ。高高度を飛行し、必要に応じて位置を変更できるため、指揮官がウクライナ空軍を監視し、ウクライナ軍のミサイルやドローン(無人機)の飛来を数分前に察知するのに役立っている。
A-50の重要性は、ウクライナが現在行っている占領下にある南部クリミアのロシア軍の兵站と軍艦を標的にした深部攻撃作戦で明確に示されている。ウクライナ軍が昨年末にドローンとミサイルでクリミアに設置された地上レーダー数基を破壊した後、ロシア空軍は防空網にできた穴をカバーするためにA-50をシフトさせたと伝えられている。