プーチンとその操り人形たちは、炭化水素経済に固執している。彼らにとってそれはウクライナとの戦争を支え、社会的義務を果たすこともできる、金もうけのからくりだ。しかし、そこには長期的な視点が欠けている。今ロシアの石油や天然ガスを買い支えている各国でさえ、グリーンエネルギー経済へと少しずつ舵を切っている。
ロシアの科学者たちは温暖化の危険性を十分に認識しているが、プーチンが権力の座にしがみつくことを第一に考えている現在、彼らに発言権はない。
「ロシアには今、将来を見据えた視点を持つ余裕がない」と米ノートルダム大学のスザンヌ・ウェングル准教授(政治学)は指摘する。
「ロシアは何が何でも権力にしがみつこうとしている。ロシア政府の動向を決定づける動機など誰にもわからないが、ロシアの経済は戦争遂行努力を中心に回っている。2030年や2050年の気候変動と炭素削減など考えてもいない」
ウェングルは最近、ソビエト連邦崩壊後のユーラシア大陸を専門とする研究者16人と共著した論文『Russia in a Changing Climate(気候変動下のロシア)』を発表した。分析の主題は、ロシアにはクリーンエネルギーへの移行計画がないこと、それがあれば21世紀の経済に溶け込み、近隣諸国と平和に共存できるだろうことだ。
だが、ロシアはむしろ石油と天然ガスを政治的な武器として利用している。たとえば、1990年から2014年まではウクライナを勢力下に収めておくため天然ガスを割引価格で販売していた。しかし、ウクライナが西側諸国との協調を選ぶとすぐさまガス供給を断ち、さらに領土へと侵攻した。事態を受けて欧州はロシアの化石燃料をボイコットした。