欧州

2024.02.28

現代版「バンザイ突撃」繰り返すロシア軍、多大な犠牲出しながらも前進

2019年1月、サンクトペテルブルクで行われた軍事パレードで走行するロシア軍のBMP-3歩兵戦闘車(Karasev Viktor / Shutterstock.com)

第二次大戦中、日本軍は連合軍を圧倒しようと人海戦術に訴えることが少なくなかった。連合国側はこうした攻撃を「バンザイ突撃」と呼び、機関銃の掃射や迫撃砲の猛射で応戦した。

80年後、ロシア軍はウクライナで旧日本軍と同じような戦術をとっている。違いは、応戦する側のウクライナ軍に銃弾や砲弾が足りないことだ。弾薬不足は、米議会のロシア寄りの共和党議員らがウクライナへの援助を妨害し続けていることが主な原因だ。

ロシア軍による歩兵先行の「肉弾攻撃」は、ロシアが2年前に始めたウクライナに対する全面戦争で目新しいものではないが、その戦術は進化している。ウクライナ軍の絶望的なまでの砲弾不足に目をつけたロシア軍は、歩兵戦闘車に搭乗あるいは跨乗させた部隊を次から次に波状的に送り込むことで、自軍の人的戦力の消耗よりも早くウクライナ軍の火力を消耗させることを狙っている。

ウクライナのシンクタンクである防衛戦略センター(CDS)は、ロシア軍がウクライナ東部ドネツク州バフムートの西方の戦闘でこうした戦術を用いていると解説している。現代版バンザイ突撃と言えるその戦術では「8~12両の歩兵戦闘車に乗り込んだ総勢100〜200人の攻撃グループが、ウクライナ軍部隊がいる前線まで一気に前進し、攻撃を開始する」という。

「(ウクライナ側の)弾薬が不足しているため、(ロシア側の)攻撃グループの一部は目標地点まで到達し、戦闘に入る。同時に、別の攻撃部隊がこの戦闘区域に向けて迅速に移動してくる」

「この戦術によって敵は(目標の達成に向けた)努力を持続的に積み重ねていくことができるが、多大な損害を被っている」とCDSは記している。ロシア側は1回の攻撃で装甲車両の最大6割、人員の最大半分を損耗するほどだという。一方で、こうした攻撃は防御側の「ウクライナ軍部隊の人的損害も拡大させており、この損害拡大はウクライナ軍部隊にとって危機的だ」とも指摘している。

ロシア軍によるこうした戦術は、ウクライナ南部ザポリージャ州の村ロボティネで24日にあった攻撃でもみられた。ロシア軍第70親衛自動車化狙撃連隊のBMP-3歩兵戦闘車少なくとも2両が、同州でのウクライナ側の最南部の陣地であるこの村に突入する。2両は射撃を行いながら移動したあと、歩兵を降ろす。歩兵たちは崩れた建物に身を隠す。

BMP-3は撤収し、ロシア軍の歩兵たちはウクライナ軍第65独立機械化旅団とその爆薬搭載ドローン(無人機)と単独で戦うことになった。生き残ったロシア兵はほとんどいなかったようだ。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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