欧州

2024.02.19 11:00

ウクライナがロシアに勝つ方法「2年間、年4500両の装甲車両破壊を継続」

安井克至

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戦時経済体制に入り、長年使われていなかった工場が稼働し始めたことで、ロシアは現在、ウクライナに展開する47万人の兵力のための装甲車両を年4500両ほど生産している。

これは英王立防衛安全保障研究所(RUSI)の新たな研究で指摘されていることの1つだ。

独立系オープンソースインテリジェンス(OSINT)サイトのOryxのアナリストらによると、ロシアが2022年2月にウクライナに全面侵攻してからの2年間で失った1万両ほどの戦車や戦闘車両、装甲兵員輸送車の穴を埋めるには、年4500両の生産では到底足りない。

だが、4500両というのはいい線を行っている。「ロシア大統領府は現在の消耗ペースで2025年まで持ち堪えられると考えている」とRUSIのアナリスト、ジャック・ワトリングとニック・レイノルズは書いている。

ワトリングとレイノルズによると、留意したいのはロシアが毎年生産するそうした4500両の80%は新たに生産されたものではない、「倉庫にしまわれていた予備を改修し、近代化したもの」だということだ。

かつては冷戦時代の余りものであふれんばかりだったそうした在庫にも限りがある。「保管されている車両数からして、ロシアは今年一貫した生産量を維持することができる一方で、2025年には車両がより大がかりな改修を必要とすることに気づき始める」とRUSIのアナリストらは書いている。

「2026年までに利用可能な在庫の大半を使い果たすだろう」とも指摘している。

RUSIの結論は、エストニア国防省が最近公表した報告書の結論と一致する。ロシアでは「新しい装備の生産は、長期保管されていた装備の改修に概ね移行している」と同省は指摘した

在庫は「あと数年」はもつ可能性があると同省は結論づけている。衛星画像を徹底的に分析し、稼働している車両や破壊されたもの、そして保管されている車両の数を追跡しているオープンソースのアナリストらは、ロシアの予備車両が2025年か2026年に底をつくことを示す傾向を指摘している。

もちろん、ロシアはゼロからの車両生産により多くのリソースをシフトさせることができる。だが、車両の改修に必要なのはたいていの場合、ちょっとした金属加工やエンジンの点検、無線の交換、そして光学機器や装甲のささやかなアップグレード程度(この車両に乗り込むことになる乗員は運がいい)であるのに対し、ゼロからの生産ははるかに労力を要し、リソースを大量に消費する。

エストニア国防省は、ロシアが「各国から制裁を受けている状況で生産品質を大幅に向上させることは、中期的には非現実的だろう」と説明。制裁によって「ロシアの軍産複合体は高品質の部品、特に工作機械や生産ライン、工場設備の入手が制限されている」とも指摘した。
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翻訳=溝口慈子

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