エネルギーに依存するロシア経済は打つ手がなくなり、ますます中国に目を向けるようになった。これは、ウラジーミル・プーチン大統領が約20年前に始めたプロセスの加速である。だが、中国がロシアを必要としている以上に、ロシアは中国を必要としている。
ウクライナ侵攻から1年、ロシアの天然ガス売上高は開戦前と比べて半減した。習近平国家主席のモスクワ訪問で、いくらかの安心材料がもたらされるとロシアは期待していた。習主席はロシアとの関係について「今、100年来見られなかったような変化が起きている。その変化をともに推進しているのが私たちだ」と美辞麗句を披露した。また、公開書簡でもエネルギーの重要性を強調し「中国はロシアと連携して、より緊密なエネルギー協力パートナーシップを築く用意がある」と表明した。
しかし、中国は明らかに自国の利益を重視し、悠長に構えている。天然ガスに関する新たな協定は、いまだ締結されていない。プーチンは露中首脳会談に先立ち、シベリアから中国へ天然ガスを輸送する新パイプライン計画を持ち出して、合意は最終段階にあると主張した。中国側の反応はまだない。ロシアは再三にわたり中国に中身のある支援を求めてきたが、中国は応じていない。
中国は世界最大のエネルギー消費国であり、ロシアに対して大きな影響力を持っている。プーチンは、旧ソビエト連邦とソ連崩壊後の指導者たち(自分自身を含む)が慎重に育ててきた欧州の巨大な天然ガス市場を失った。年間1500億立方メートルの天然ガス輸出収入は、ロシアの生命線だった。中国はその収入を代替する存在にはほど遠い。ロシアは中国にとって第5位の天然ガス供給国にすぎず、中国経済の成長への影響は微々たるものだ。中国の天然ガス輸入に占めるロシアの割合はわずか6%で、一方、最大のパートナーであるオーストラリアは40%に上る。ロシアは2022年9月、シベリア東部のパイプラインの保守点検が必要だとして中国への天然ガス供給を1週間以上にわたり停止し、中国政府を威圧しようとする失策を犯した。