欧州

2024.02.08 11:00

ロシアの凶悪ドローン生産、ウクライナの攻撃で停滞した可能性

精密な攻撃

なぜウクライナはオペラグラスを製造する工場を標的にしたのだろうか。それは、ZOMZが軍用の双眼鏡やライフルスコープも生産しているからだ。同社の軍事への深い関与が示唆されている。例えば、ロシアの次世代のメッセンジャー爆撃機に関連するZOMZとの少額(約1億円)の契約が政府文書から明らかになっている。これはおそらく光学装置だ。

ZOMZの爆発直後、ウクライナ人アナリストのドミトロ・スネギリョフは、この工場がザラ・アエロスペース製のクブやランセットといったドローンの部品(おそらくカメラのレンズやその他の光学部品)の製造に関連している可能性が高いとウクライナニュースサイトのフォーカスに語った。メッセンジャーの契約の実績を考えれば理にかなっているかもしれないが、ザラとZOMZの間にはっきりとしたつながりはない。

筆者はスネギリョフにこの情報の出所を尋ねた。

「特殊業務だ。特定はしない。しかし、ウクライナ国防省情報総局(GUR)ではない」とのことだった。

ZOMZとザラの関係は証明されていない。だが、爆発は影響を与えたようだ。

サプライチェーンの断絶

ランセットは2019年に発表され、2021年にシリアに配備された。だが、ウクライナとの戦争に投入されたのは遅く、2022年7月まで姿を見せなかった。ロシアの軍事分析サイトLostArmourは、ソーシャルメディアで共有されたランセットの攻撃映像をすべて記録している。これは全体のほんの一部だろう。あるウクライナの情報筋は、ランセットの成功率は約30%としており、映像にある攻撃1件につき、2、3件の失敗や撃墜があると考えられる。

LostArmourの数字からは、ランセットの攻撃回数には浮き沈みがあることが示されている。昨年初めには月におよそ25回だったが、3月と4月にはほぼ50回になり、7月にはピークの135回に達した。8月も7月の回数に近い126回だったが、それ以降は急増するどころか減少している。9月と10月は50回台で、11月には89回まで増えたが、12月には59回へと再び減った。

ランセットの生産は急増するどころか減少した。8月に何かが起こり、それによりザラは組み立てたランセットを仕上げることができなくなった。
次ページ > 生産を阻止するのにドローンによる攻撃は必要ないかもしれない

翻訳=溝口慈子

タグ:

連載

Updates:ウクライナ情勢

ForbesBrandVoice

人気記事