ロシア軍の2個野戦軍が、すでにロシアの支配下にあるドネツク市のすぐ北西に位置し、ウクライナ軍の要衝であるアウジーイウカの攻略に向けた攻撃を開始してから4カ月。兵力約4万、車両数千両を投入し、おびただしい血を流してきた作戦は、最終局面を迎えつつある可能性がある。
「市の状況は危機的になっている」。ウクライナのジャーナリスト、アンドリー・ツァプリエンコはそう報告している。
作戦が実際に最終局面にあり、ロシアが勝利することになれば、その責任が主に誰にあるのかは明らかだ。米議会のロシア寄りの共和党議員たちである。彼らは昨秋以来、米国によるウクライナへの援助を妨害し、その結果、ウクライナ軍がロシア軍の火力に対抗するために必要としている弾薬を枯渇させた。
ウクライナの戦場記者ユーリー・ブトゥソウは4日「アウジーイウカは新たな予備と交代部隊を緊急に必要としている」と伝えている。「弾薬も必要だ。補給も極度に少なく、敵(ロシア側)が大きく優位な状態にある」
アウジーイウカ守備隊は、ロシア軍と親ロシア派勢力がウクライナ東部に侵攻した2014年以来、10年にわたって持ちこたえてきた。ロシアがウクライナでの戦争を拡大した2022年2月以来、2年近くはウクライナ軍の第110独立機械化旅団が市の防衛の主力を担ってきた。
アウジーイウカ占領がロシアの主要な目標の1つだということが明らかになったあと、ウクライナ軍東部司令部はこの方面の防衛の増強をしなかったわけではない。増強はしていた。
アウジーイウカの北面には、近接する集落ステポベを防衛するため、米国製M2ブラッドレー歩兵戦闘車などを運用する精鋭の第47独立機械化旅団が配置された。南面には第53独立機械化旅団が増援に到着した。
ただ、市の中心部を守るのは依然として第110旅団と国家警備隊や特殊部隊の一部だけとなっている。
2000人規模の第110旅団は休息のための交代を一度もせず、連日戦い続けてきた。歩兵は塹壕に陣取り、攻めたり守ったりする。ドローン(無人機)の操縦士は爆発物を積んだドローンなどを飛ばしときには廃墟に駆け込んでアンテナを設ける。砲手はグレネードランチャー(擲弾発射器)や対戦車ミサイルを目標に向けて撃ち込む。
第110旅団、あるいは増援の旅団もそうやって、この4カ月、攻撃してくるロシア軍の縦隊をつぶしてきた。昨年12月までにロシア側は死者・重傷者を1万3000人出し、装甲車両を数百両失った。2カ月後の現在、ロシア軍の兵力の損耗は2倍に膨らんでいる可能性がある。
だが、ロシアは新たな部隊を次から次に「肉挽き機」のような戦場に投入し続けた。人員にも装備にも多大な犠牲を出しながら、ロシア軍はまずアウジーイウカの側面に、次に市内へとじわじわ前進してきた。
ウクライナ軍によるアウジーイウカの防衛では、常に小型ドローンが鍵を握ってきた。やって来るロシア軍部隊を偵察ドローンが発見する。爆発物を積んだFPV(1人称視点)ドローンがそれを攻撃する。最後はM2や戦車が出撃してとどめを刺す。