欧州

2024.02.05

ロシアの「エースドローン操縦士」殺害を機にウクライナは南部で攻勢に転じる

Getty Images

ウクライナ海兵隊は同国南部ヘルソン州を流れる広大なドニプロ川の左岸(東岸)に位置するクリンキに幅の狭い橋頭堡(きょうとうほ)を築き、なんとか持ちこたえている。そこでの戦いの大部分はドローン(無人機)によるものだ。

ロシア軍、ウクライナ軍双方とも、1人称視点(FPV)の小型ドローンで互いを監視し、攻撃しており、空がFPVで埋め尽くされる日もある。

そのため、1月中旬にウクライナ軍のドローンチームが「モーゼ」を意味する「モイセイ」というコールサイン(無線会話で使われるニックネーム)を持つロシア軍のエースドローン操縦士の居場所を割り出して殺害したのは大きな出来事だった。

モイセイの殺害でクリンキでの戦いの勢いが変わった。「モイセイのグループが無力化された後、敵は何の問題もなく集落内を徘徊している」と、あるロシア人の従軍記者はSNSで不満を語っている(@wartranslatedがロシア語から英語に翻訳)。

ウクライナ軍の第35独立海兵旅団の部隊は昨年10月中旬にドニプロ川を渡った。それから数カ月間、橋頭堡を拡大するのに苦労した。

確かに、自軍の大砲とドローンが右岸から海兵部隊を援護し、ほぼ毎日ロシア軍の反撃を跳ね返していた。だが、海兵部隊は攻撃を成功させられるほど橋頭堡を十分拡大することができなかった。

モイセイがその主な原因だった。モイセイはクリンキの前線からわずか約150m西にある2階建ての家から、約900gの爆薬を搭載したFPVドローンを飛ばし、ウクライナ軍の兵士が補給と橋頭堡の補強で頼っていた小型ボートや水陸両用トラクターを容赦無く追い回した。

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翻訳=溝口慈子

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