2人によれば、彼らの乗る71t、4人乗りのチャレンジャー2は、ウクライナ側の支配する樹林帯から、ロシア側の支配する最長2.8km程度離れた樹林帯に向けて射撃している。着弾位置はドローン(無人機)からの情報で修正しているという。射撃は夜間に行うことが多いようだ。
目標は「コンクリートで覆われた塹壕」。「車両を相手にしたことはまだありません」と乗員の1人は語っている。
ウクライナ空中機動軍(空挺軍)の第82独立空中強襲旅団に14両が配備されたチャレンジャー2は、主砲の120mmライフル砲から榴弾を射撃し、歩兵を支援している。
これは、歩兵が戦車を支援する「戦車ファースト」のドクトリンの正反対だ。ウクライナ軍のチャレンジャー2は、戦車というよりもむしろ機動砲に近い運用をされている。機動的な突撃は、することはあってもめったにない。
インタビューに応じた乗員の1人は理由をこう説明している。「(原野や農地など)路外の機動は難しいんです。わたしたちの土地で使うには(チャレンジャー2は)重い」
A short report on the combat use of the British-supplied Challenger 2 tank, which belongs to the Ukrainian 82nd Air Assault Brigade. For secrecy purposes, some details are omitted from the report. pic.twitter.com/WqkqkAT7nJ
— Challenger Tank In Ukraine🇬🇧🇺🇦 (@ChallengerInUA) January 31, 2024
同年8月下旬か9月上旬ごろ、1両のチャレンジャー2が、ロボティネ周辺を白昼に移動中、ロシア側の対戦車ミサイルを被弾した。乗員は脱出したが、その後、砲塔の120mm砲弾が(湿式の容器に収納されていたにもかかわらず)クックオフ(火災や高熱による発火)したらしく、爆発が起きて戦車は破壊された。
これが、ウクライナ軍のチャレンジャー2の確認できる唯一の損失である。残りのチャレンジャー2は現在も戦っていて、歩兵がロボティネ周辺で防衛境界線を広げたり、ロシア側の逆襲からロボティネを防御したりするのを支援している。
樹林帯の戦闘陣地から3km近く先にあるロシア側の要塞に射撃するというのは、退屈に聞こえるかもしれないが、実際はそうとも限らない。こうした戦い方をする場合も、チャレンジャー2はロシア側のミサイルやドローン、大砲による脅威に常にさらされるからだ。
ただ、インタビューに答えた乗員の1人は、無頓着とまではいかなくとも、感覚が麻痺してくると述べている。「初めての任務に臨むときがいつもいちばん怖いんです。(中略)でもそれからは、人間は何事にも慣れるものです」
チャレンジャー2の破壊力にさらされるロシア兵側も同様なのかは定かでない。チャレンジャー2は、この戦争で使われている戦車としては最も重い。その威圧感は遠方から攻撃する場合でさえ伝わるようだ。
「(ロシア側の)無線交信を傍受したことがあったんです」とチャレンジャー2の乗員は振り返る。やりとりはこんなものだったという。
《車両の動きを探知》と偵察兵。
《どんな車両だ?》と相手。
《わからない。ばかでかくて、すごくうるさい》
(forbes.com 原文)