欧州

2023.09.06 12:00

ウクライナ軍、チャレンジャー2戦車を初めて失う

英陸軍のチャレンジャー2戦車。英南部ソールズベリー平原で行われた演習の様子(Shutterstock.com)

英陸軍のチャレンジャー2戦車。英南部ソールズベリー平原で行われた演習の様子(Shutterstock.com)

英国から供与されたウクライナ軍のチャレンジャー2戦車に、初の損失が生じたようだ。第82空中強襲旅団に所属するとみられる1両が、ウクライナ南部ザポリージャ州ロボティネ郊外の道路脇で炎上している様子を撮影した動画が4日、インターネット上に出回った。

英国はことし1月、重量69トンで4人乗りのチャレンジャー2を14両ウクライナに供与すると発表。ウクライナ国防省は数日前、第82旅団に所属する兵士のインタビュー動画でこの戦車を取り上げたばかりだった。

この兵士は、チャレンジャー2の長距離火力と優れた防御力を、旧ソ連製の戦車と比較して称賛していた。第82旅団のチャレンジャー2が120mmライフル砲の威力を見せつける映像はまだ公開されていないが、炎上する動画は皮肉にも、この戦車の生存可能性の高さを浮き彫りにしている。というのも、炎上するチャレンジャー2にはまだ砲塔がしっかり付いているからだ。

旧ソ連製の3人乗り戦車であるT-72、T-80、T-90の大きな弱点の1つは、弾薬を手動装填する4人目の搭乗員の代わりに自動装填装置を備え、砲塔の真下に弾薬を格納していることだ。このため、被弾すると車体が花火のように大爆発する傾向があり、砲塔が搭乗員もろとも吹き飛ぶケースもよくみられる。

ウクライナ国防省のインタビュー動画でも、かつてT-80に搭乗していた第82旅団の戦車兵が、被弾したら搭乗員は空中に放り出され、「(生存の)チャンスはほとんどない」と語っている。

チャレンジャー2は対照的に、西側の多くの戦車と同じく砲塔近くの特別な区画に弾薬庫があり、被弾しても外側に向けて爆発して搭乗員を巻き込まないようになっている。「すべてが搭乗員のために設計されている」と第82旅団の戦車兵は説明していた。

ロボティネ郊外の路肩で炎上していたチャレンジャー2をどのような不運が襲ったのかは不明だが、第82旅団と第46空中機動旅団が、解放されたロボティネから南東のベルボベに向かって着実に前進していることはわかっている。両旅団の最終目標はロシア占領下にあるメリトポリで、幹線道路T0408号~0401号沿いに約80km南下したところにある。
次ページ > 金属片は交換できるが、人命は修復できない

翻訳・編集=荻原藤緒

タグ:

連載

Updates:ウクライナ情勢

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事