なぜ「真夜中の会話」は深いものだと感じてしまうのか 科学的に解説

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世界中が寝静まった後に交わす深い会話には、まぎれもなく特別な何かがある。深夜の会話には、私たちの多くが共感できる共通の感情がともなう。たとえば次のようなものだ。

・親密な感情の高まり
真夜中には、気持ちの上での距離が近くなる。この親近感は、日中の交流では必ずしも表面化しないものだ。夜の静けさと孤独が、個人的な話や感情を共有したくなる安全な空間を作り出す。

・より正直で無防備になる
夜は、日常の仮面が剥がれやすくなるようだ。深夜帯のほうが素の自分でいられると感じる人は多く、日中のやりとりでは踏み込まないような、より正直で無防備な会話をしがちになる。

・哲学的で実存的な深み
星空の下に座ると、自分たちの在り方を広大な宇宙との対比で考えることができ、人生の大きな疑問や個人の価値観に関する会話が自然に盛り上がる。

・時間にとらわれない自由
普段の時間の制約が消えてなくなったように感じる。差し迫った予定や仕事のプレッシャーがないため、会話は脱線しながら自由に展開し、しばしば思いがけない洞察に満ちた結論へと導かれる。

私たちは真夜中の会話でこうした感情を経験しがちだが、そのとき脳内ではいったい何が起こっていて、どうして会話の内容に独特の説得力が生まれるのか、不思議に思ったことはないだろうか。科学的な裏づけのある説明を2つ紹介しよう。

1. 脳の快楽中枢への経路は深夜に開く

2022年の総説論文によると、脳の神経伝達物質の中には、夜間に興味深いかたちで血中濃度が変化するものがある。集中力や覚醒と関連のあるノルエピネフリン(ノルアドレナリン)や、気分や幸福感に関連するセロトニンが睡眠に備えて減少する一方、報酬系で働いてポジティブな感情や意欲を生み出すドーパミンは、夜遅くに血中濃度のピークを迎える傾向がある。

ドーパミンが増えると覚醒状態が続き、会話に花が咲く。ドーパミンはまた創造性、感覚や新奇性の追求、衝動性といった特性を高めることもわかっており、より生き生きとして遠慮のない、記憶に残るやりとりが生まれやすい。
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翻訳・編集=荻原藤緒

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