ウクライナ軍が2カ月にわたるロシア軍の波状攻撃からアウジーイウカを死守できたのも、これらの重要な補給線が確保されてきたからだ。
10月、ロシア軍の連隊や旅団はアウジーイウカを南北から側面攻撃するために、戦車をはじめとする戦闘車両を集結させた。しかし、これらの車両がウクライナ軍の陣地に対する攻撃の開始地点に入るためには、ウクライナ側の火砲やドローンが狙いをつけているキルゾーンを抜けなくてはいけなかった。
ロシア軍は突撃を続けた結果、車両を数百両、人員を数千人失った。しかも、大きな前進は遂げられなかった。
11月に入り、ロシア軍の指揮官は戦術を切り替えた。各連隊は車両での攻撃に代えて、歩兵部隊を徒歩で送り込むようになった。これらの歩兵部隊には、最近徴兵され、訓練の不十分な動員兵(モビク)を中心とした「ストームZ」部隊も含まれていた。
下車戦闘するロシア軍の歩兵は、ウクライナ軍が夏の反転攻勢の失速後、南部から配置転換した旅団の戦車にまみえることになった。ロシア軍はさらに数百人ないし数千人の死者を出した。それでも、アウジーイウカの北で1.5km程度、南では町の郊外まで前進することに成功した。
国民が「黙認」しているために、ロシアの政権は、自由社会の政府ならとてももたないほどの大きな損害を戦争で出しても、ものともしない。とはいえ、ロシア人も死ねる数には限りがある。2カ月で何千人もの死者を出したあと、アウジーイウカを直接攻略しようとするロシア軍の試みは終わりつつあるようだ。
だが、間接的に攻略する試みが始まりつつある。「ロシア軍の攻撃は継続するだろうが、当初の計画どおりにこの町に対する強襲や全周攻撃を追求するのではなく、防御側の(補給を断つ)包囲にアプローチが変化する可能性がある」とフロンテリジェンス・インサイトはみている。