戦術的な観点からすると、ひどい考えではない。ウクライナ軍の旅団はこの夏、南部での反攻作戦時に戦闘車両を使った攻撃から、下車した歩兵による攻撃に切り替え、その結果、少なくとも2つの重要な軸に沿って約16~19km前進した。
だが歩兵の突撃は、敵が防衛に有利な場所を占めているときや雨や雪で寒いとき、そしておそらく最も重大な航空部隊や砲兵部隊からの十分な支援がないときには、危険なものになり得る。
ロシア空軍はアウジーイウカにさらに多くのクラスター爆弾を投下し、より大型の滑空爆弾も落としている。だがロシア空軍がこうした攻撃を歩兵隊と連携を取りながら実行しているのかどうかははっきりしない。ロシア軍の旅団や連隊は支援のない下車攻撃に切り替える中で、何千人もの歩兵が車両の中ではなく徒歩で戦って死ぬことを運命づけられた可能性がある。
ロシア軍がアウジーイウカへの攻撃を開始したのは10月中旬で、ちょうどザポリージャ州とドネツク州でのウクライナ軍の反攻の勢いが弱まっていた時期だった。ロシアの狙いは明白だった。ロシアが占領する東部の州の拠点であるドネツク市からわずか数kmほどのところにあるウクライナ軍の拠点を制圧することだ。
何週間にもわたって毎日、ロシア軍の第2諸兵科連合軍やその他の野戦軍の旅団が、中隊や大隊規模の攻撃をアウジーイウカに仕かけた。地雷や大砲、ドローン(無人機)によって撃退されたこれらの旅団はすぐにアウジーイウカの側面へと攻撃の方向を変えた。
これに対してウクライナ軍参謀本部は、第47独立機械化旅団をアウジーイウカの北面に、第53機械化旅団を南面に配備し、少なくとも2個の砲兵旅団に第47、第53の旅団、そして疲れ切った第110機械化旅団を支援するよう指示した。第110旅団は1年以上、休憩を挟むことなくアウジーイウカを守ってきた。
アウジーイウカ周辺の地形はほぼ平地で樹林帯があり、鉄道が走っている。北側には広大なコークス工場の隣に荒れた産業廃棄物の山がある。身を隠せるような場所はあまりない。ウクライナ軍の陣地への攻撃を始める地点に到達するだけでも、ロシア軍はウクライナ軍のドローンと大砲の攻撃をかわしながら数kmも進まなければならない。