だが、あまりに多くの隊員がウクライナで死傷したため、ロシアは8月に既存の旅団を拡大・再武装して第104空挺師団を新たに編成すると発表した。
ロシアの空挺隊員は本来、通常の陸軍兵士より多くの訓練を受ける。だが、第104師団は早急に編成されたため、十分な訓練を受けられなかった。そして現在、ドニプロ川左岸(東岸)の戦線で苦戦を強いられている。
この地域では2カ月前、ウクライナの海兵隊がドニプロ川をモーターボートで渡り、大砲やドローン(無人機)、徹底的な無線妨害の支援を受けながら、ロシア軍が支配する左岸の集落クリンキに橋頭堡(きょうとうほ)を確保した。
ウクライナ側はこの新たな前線から突破口を開き、同国南部からロシア軍を排除したいと考えている。
現地に展開するロシアの海軍歩兵部隊は陸軍の自動車狙撃連隊の加勢を得たが、ウクライナの海兵隊を追い払うことはできなかった。そのため、9〜10月に大急ぎの訓練を受けた新設の第104師団がウクライナ南部に配備され、戦闘を主導した。
「主な期待は、われわれと海軍歩兵部隊にかけられることになる」と、第104師団のある隊員はソーシャルメディア上に出回った手紙に書いている。
ただ、大きな期待はかけられない。第104師団、あるいは近くにいる空中強襲部隊による最初の攻撃は、ウクライナ軍がロシア側のBMD戦闘車を数両を破壊したため失敗に終わったようだ。
ウクライナ軍がクリンキとその周辺に最強のドローンや大砲、防空、その他の支援部隊を集中させていることは今となっては明らかだ。ただ、こうした部隊の集中投入により、東部のアウジーイウカやバフムートなど他の方面にいる部隊が陣地を守る作戦で受ける支援は減る。
「最初に目に飛び込んでくるのは砲撃戦で、客観的に見れば、ナチスの方にはるかに分がある」と前述の隊員は書いた。ロシアのプロパガンダではウクライナ人は「ナチス」と呼ばれる。実際には、ウクライナは民主主義国家、ロシアは権威主義国家で、ロシア軍は占領地で市民に対し戦争犯罪を犯しているのだが。