欧州

2023.12.08 09:00

ウクライナ、自走りゅう弾砲を国内生産 ただし課題は砲弾の確保

遠藤宗生

ウクライナ軍の2S22ボフダナ自走りゅう弾砲(Roman Chop/Global Images Ukraine via Getty Images)

ウクライナは来年、少なくとも72門の装輪自走りゅう弾砲を生産する見通しだが、それに加えて必要なのは、十分な砲弾だ。

同国のウォロディミル・ゼレンスキー大統領は4日、ウクライナで最も多くの装甲戦闘車を生産する東部ハルキウ州のけん引車工場が、月6両の2S22ボフダナ装輪自走りゅう弾砲を生産していると説明。「自国での生産拡大の取り組みが実を結んでいる。さらに増産する方法はすでにわかっている」と述べた。

重量28トン、六輪駆動の2S22は、ウクライナ軍が運用する旧ソ連製のりゅう弾砲を上回る利点がある。旧ソ連標準の122mmまたは152mmの砲弾ではなく、北大西洋条約機構(NATO)標準の155mm砲弾を使うため、外国の弾薬備蓄を頼ることができるのだ。

だがウクライナを支援する国々の備蓄も減っており、補充の試みは政治的な障害にぶつかっている。

2S22の試作車は、ロシアが昨年2月にウクライナに対して仕掛けた戦争の最初の攻撃をかろうじて生き延びた。

ウクライナの政治家セルヒー・パシンスキーによると、2S22を設計した東部にあるクラマトルスク重機工場の関係者は、ロシア軍の連隊が接近していることを受け、試作車が「敵の手に渡らない」ように爆破の準備をした。

だが、ロシア軍の攻撃は激しい抵抗に遭い、進軍はまず南部で、次に北部で止まった。2S22がロシア軍の手に渡るリスクは薄れた。

2S22は2021年10月の試験で数回の砲撃を行い、問題なく作動した。そこで翌年5月初旬にウクライナ軍は2S22を戦線沿いの、おそらく東部のどこかに配備した。パシンスキーは、ドローン(無人機)が発見したロシア軍の標的に向けて2S22が発砲する様子をとらえた映像をネットで公開した。

その2カ月後、2S22はウクライナ南西部に再配備された。黒海に浮かぶズミイヌイ(スネーク)島までの距離はわずか32kmで、同島に最も近い場所だ。標準の砲弾を使う2S22の射程約40km内に入る。ロシア軍は開戦時からズミイヌイ島を占領し、そこを拠点に黒海西部を支配していた。

ウクライナの海軍と空軍は、2S22が砲撃を開始するまでの数カ月間、ズミイヌイ島のロシア軍の弱体化を図った。そして2S22が大量の155mm砲弾を浴びせ、最終的に残っていたロシア軍を同島から追い出し、黒海西部を解放した。
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翻訳=溝口慈子

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