欧州

2023.12.06 12:30

ロシアの改造自爆ドローン、ウクライナの4G通信網を利用

自爆型ドローン(無人機)のシャヘド(Shutterstock.com)

ロシアは自爆型ドローン(無人機)のシャヘドに、4G対応モデムとウクライナの通信用SIMカードを搭載し、民間の携帯通信網を利用できるようにして、より賢く、一層危険なものにしている可能性がある。

だが、ロシアによる通信網拝借がうまくいくなら、ウクライナがそれを真似できないはずがない。民間の4Gに接続するドローンは、ウクライナよりもロシアにとって危険なものだ。

ウクライナ空軍の技術者らは、ウクライナ軍が最近撃墜したロシア軍のシャヘドの残骸を調べた際、奇妙なものを発見した。

ロシア軍はウクライナに侵攻してから1年9カ月の間に、重量約200kgの自爆型ドローンをウクライナの都市に向けて数百機も飛ばしてきた。夜空に溶け込むように黒く塗られたシャヘドはそのうちの1機だった。

ウクライナ軍が見つけた奇妙なものとは、ウクライナの通信会社キーウスターのSIMカードと4Gモデムのセットだ。プロペラ駆動のシャヘドにモデムは必要ないはずだった。衛星で誘導されるシャヘドは自律的に飛行するため、長距離飛行中に映像などのデータを操縦士に中継する必要はない。

だが、シャヘドが映像を中継できれば、操縦士はドローンの飛行コースを調整し、最も脆弱(ぜいじゃく)な標的に向かわせることができるかもしれない。敵の4G携帯通信網の利用は、ドローンを操縦士とつなげる最も安上がりで簡単かつ、ハッキングや妨害が最も難しい手法かもしれない。


また、モデムとSIMのセットは自律飛行を補助する装置である可能性もある。無線基地局を経由することで、ドローンは自らの位置を三角測量で割り出し、衛星への依存を減らすことができる可能性がある。そうであれば、ウクライナによるロシアの衛星回線妨害という問題を解決できる。

シャヘドに追加された目的が何であれ、ウクライナ空軍はすでにそれを知っていた可能性がある。「必ずしも何かを把握しているかどうかを公表する必要はない」と空軍報道官のユーリー・イフナットは述べている。
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翻訳=溝口慈子

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