それははったりではなかった。2週間後、ウクライナ軍は黒海北西部のズミイヌイ(スネーク)島付近の上空で、オデーサを攻撃しようとしていたとされるロシア軍のSu-24戦闘爆撃機をミサイルで撃墜した。乗員2名・エンジン2基のこの超音速機を撃ち落とすのに使われたミサイルは、現時点で特定されていない。
Su-24が積んでいた弾薬が何だったのかも、よくわからない。この可変後退翼機を撃墜した防空システムが何だったのかについては、推測はできるものの、やはりはっきりとはわからない。いずれにせよ、ウクライナ軍は南部の防空を増強することで、ロシア軍に対して優位性を確保した可能性は十分ある。
端的に言えば、ウクライナ軍が現在オデーサに配備している防空システムの射程は、ロシア黒海艦隊がこれまでオデーサに向けて撃ち込んできた対地ミサイルの射程よりも、長くなっている可能性があるということだ。
ウクライナ軍は撃墜の事実をソーシャルメディアで認めた。「ズミイヌイ島のエリアでロシア軍のSu-24M爆撃機を破壊したことをお知らせする。この爆撃機はSu-30SM戦闘機の掩護を受けながら、オデーサ(州)南部にミサイル攻撃を仕掛けようとしていた」とウクライナ空軍は通信アプリのテレグラムに投稿している。
投稿では、このSu-24は海底で黒海艦隊の巡洋艦モスクワと合流したとも皮肉った。黒海艦隊の旗艦だったモスクワは2022年4月、ウクライナ軍の対艦ミサイルを食らって沈没した。「巡洋艦モスクワは近々、航空母艦になりそうだ!」とも揶揄した。
この秋より前は、ウクライナ空軍は旧ソ連製のS-300地対空ミサイルシステムでオデーサを守っていた。S-300の射程は標準仕様で80kmほどだ。
ズミイヌイ島はオデーサの南145kmほどに位置する。したがって黒海艦隊のSu-24はこれまで、ズミイヌイ島のあたりまで出てくれば、Kh-59MK2巡航ミサイルなどを使うことでオデーサ州各地の目標を攻撃できた。
だが、それはもはや不可能だ。オデーサから発射されるウクライナ軍のミサイルは、ズミイヌイ島あたりのロシア軍機も脅かせるようになった。
今回の撃墜は、オデーサに新たに配備された防空システムが、ウクライナ軍にとって貴重な米国製パトリオット地対空ミサイルシステムであることを強く示唆する。パトリオットのPAC-2弾は射程が160kmある。
(forbes.com 原文)