欧州

2023.11.13 10:00

ロシア軍の揚陸艇は「格好の餌食」、ウクライナ軍水上ドローンが襲撃

Evannovostro / Shutterstock.com

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ウクライナ軍の爆発物を搭載した水上ドローンが再び襲いかかった。11月9日夜、ウクライナ南部クリミアの西部でロシア軍の揚陸艇2隻を、沈没させないまでも損傷させた。

ウクライナ軍がロシアの黒海艦隊を狙い続ける中での最新の一撃だ。攻撃の目的ははっきりしている。ロシアが占領しているクリミア、そしてウクライナ南部ヘルソン州に展開するロシア軍への補給を断つことだ。

航行スピードは遅く、見た目も不格好な揚陸艇は、あらゆる艦艇の中で最も地味なタイプかもしれない。だが、水辺近くでの骨の折れる作戦では、最も重要な艦艇の1つだろう。

水上ドローンを使った揚陸艇への攻撃は、ウクライナ軍がヘルソンで展開する反攻の水上版だ。ウクライナ南部のロシア軍の兵站(へいたん)が圧迫されるにつれ、ウクライナ軍の反攻は拡大し、加速している。

ウクライナ国防省情報総局(GUR)がネットで公開した映像には、へルソン市の南約120kmに位置するタルクハンクト岬のチョルノモルスク港にいた黒海艦隊の揚陸艇2隻に向かって、猛スピードで突き進む水上ドローンが映っている。

ウクライナ側は当初、これらの船舶をセルナ級揚陸艇としていたが、映像を観た一部の人はそのうちの1隻がオンダトラ級揚陸艇ではないかと指摘した。全長約25mのセルナ級は45トンの貨物を約965km、セルナ級より古い全長約24mのオンダトラ級は50トンを約530km運ぶことができる。

水上ドローンが突っ込んだとき、揚陸艇には「乗組員が乗っており、BTR-82などの装甲兵員輸送車が積まれていた」と情報総局は主張した

ウクライナ軍による黒海艦隊への攻撃は、それまでの1週間弱で2回目だった。11月4日にはウクライナ空軍のスホーイSu-24爆撃機が、クリミア東端のケルチに停泊していた黒海艦隊のコルベット艦アスコルドに向けて、少なくとも3発の巡航ミサイル(英国製のストームシャドーかフランス製のスカルプ)を発射した。

ウクライナ政府が公開した映像からは、ミサイルがアスコルドをひどく損傷させたことがうかがえる。全長約67mのアスコルドは、ますます攻撃を受けるようになっている黒海艦隊の新鋭艦の1つだ。

ウクライナ軍の戦略広報局は攻撃を認め「ロシア軍の巡航ミサイル搭載可能なアスコルドは損傷した。『ステルス』技術を用いたカラクルト級プロジェクトの最新艦だ」と説明している

ウクライナ空軍は、スカルプミサイルの写真を添えたソーシャルメディアへの投稿で「週末はいかがでしたか?」と皮肉を飛ばした

アスコルドは、ウクライナ軍のミサイル搭載爆撃機の犠牲となった最新の例だ。同軍は9月13日にもクリミア西部セバストポリにあるロシア海軍基地をミサイルで攻撃し、乾ドックに入っていた潜水艦と揚陸艦を損傷させた。


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翻訳=溝口慈子

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