欧州

2023.11.13 10:00

ロシア軍の揚陸艇は「格好の餌食」、ウクライナ軍水上ドローンが襲撃

Evannovostro / Shutterstock.com

大型の軍艦を持たないウクライナ軍との1年10カ月にわたる激戦で、ロシア黒海艦隊は少なくとも巡洋艦1隻、水陸両用艦3隻、潜水艦1隻、補給艦1隻のほか、数隻の哨戒艇や揚陸艇を失った。そして今回はセルナ級とオンダトラ級だ。
advertisement

損傷を免れている十数隻ほどのミサイル搭載可能なフリゲート艦やコルベット艦、そして対潜哨戒艇が、黒海艦隊に残された水上の戦力の大半を占めている。そして車両などの輸送に使える艦船は10隻ほどの揚陸艦だけだ。

だがこれらの艦船は、ウクライナ軍のミサイルやロケット、無人航空機(UAV)、無人艇、工作員による攻撃を避けるために細心の注意を払わなければならない。大型の戦艦を1隻も保有していないウクライナ海軍が持つ対艦船の脅威は、ウクライナ南部戦線におけるロシア軍の兵站を複雑なものにしている。

これはロシアとクリミア間、そしてクリミアと南部へルソン州間の物資の輸送で、ロシア軍はますます船やボートに頼るようになっているからだ。
advertisement

本来なら陸路の方がずっと安全で効率的だが、ウクライナ軍はロシアとクリミアを結ぶケルチ橋を繰り返し攻撃している。へルソンのすぐ東に位置するザポリージャ州では夏にウクライナ軍の旅団が進軍し、ロシアが占領している南部の道路や鉄道をロケット砲の射程圏内に収めた。

「ウクライナ軍の間接射撃、あるいはその脅威によってロシアの陸路輸送が混乱したり停止したりすれば、クリミアへの物資の供給ルートはケルチ橋か海路のみとなる」とワシントンD.C.にある欧州政策分析センター(CEPA)の上級研究員ジャン・カルバーグは指摘。「そうなると、ロシアは苦しい選択を迫られる。きたる冬にクリミアの人々がかなりの物資不足に苦しむか、軍隊が物資不足に陥るかだ」

ロシア軍の物資がすでに不足しつつあるのは明らかだ。3週間前、ウクライナ海兵隊はドニプロ川を渡り、ロシアが占領する南部へルソンに入った。以降、橋頭堡(きょうとうほ)は強化・拡大されるばかりだ。

分隊や小隊で上陸し、火力支援は軽装甲、空からの援護は小型ドローンやヘリコプターだけというウクライナ海兵隊は、ロシア軍の戦車などを用いた反撃には弱いはずだった。

だが、ロシア軍はドニプロ川の橋頭堡に大規模な攻撃を仕かけることはできなかった。効果的なウクライナ軍の電子戦だけが理由ではない。ロシア軍も弾薬と燃料が不足している。ドニプロ川沿いに陣地を構えるロシア軍の第205旅団は8月時点で「補給ゼロ」と報告していた

ウクライナ軍はロシアの輸送船団や橋、揚陸艇を1つずつ攻撃し、ロシア軍がウクライナ南部に持つ兵站を圧迫している。圧迫されるたびに、南部のロシア軍は弱体化している。対照的に、ロシア軍を攻撃するウクライナ軍は強くなりつつある。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

タグ:

連載

Updates:ウクライナ情勢

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事