欧州

2023.11.11 12:30

ウクライナの新たな突破口候補に ドニプロ川左岸で海兵隊が前進続ける

ウクライナ軍のMi-24攻撃ヘリコプター。2010年9月、ウクライナ・ジトーミルで(dragunov / Shutterstock.com)

西側の多くの専門家や政治家がウクライナでの戦争は「膠着状態」に陥っていると断じ、ウクライナはロシアと停戦交渉をすべきだと主張している。ウクライナの子どもたちを連れ去り、ウクライナの都市を爆撃し、ウクライナの市民を殺害しているロシアと。そんななかで、ウクライナの海兵隊は攻撃に乗り出した。

3週間前、海兵隊部隊はウクライナ南部ヘルソン州の広いドニプロ川を渡り、ロシアの支配下にある左岸(東岸)側の集落クリンキに橋頭堡(きょうとうほ)を確保した。

クリンキから、さらに南へと海兵隊部隊は前進している。それを通じて、ウクライナ軍の5カ月にわたる反転攻勢を拡大してみせている。ロシアの指導者ウラジーミル・プーチンの体制をなだめたいらしい、外国の識者らの言い分を否定するかのように。

次に何が起こるかは誰にもわからない。一方、海兵隊のクリンキ渡河に先立って何が起きていたかは徐々に明らかになりつつある。ウクライナ軍は、ヘルソン州のロシア軍部隊を電波と補給の両面で孤立させ、強襲渡河作戦に向けて精鋭部隊を転用し、そのうえで、ヘリコプター部隊による大胆な掩護(えんご)も行いながら複数の軸で攻撃に出た。

クリンキ作戦は、舟艇に乗り込んだ最初の海兵隊部隊がドニプロ川を越える数カ月前、つまり夏にはもう始まっていた。早くも6月、ウクライナ軍がドニプロ川左岸に強力な電波妨害装置をいくつも展開していると伝えられている。これは、幅20キロメートル弱の範囲に、爆薬を積んだロシア側のFPVドローン(無人機)が安定して活動できず、かつウクライナ側のドローンは活動できる区域をつくり出すためだった。

「ウクライナ側は、川を移動できる強力なドローンジャマー(ドローンの通信に使われる電波を妨害する機材)を複数投入するとともに、これらのジャマーに干渉されない周波数帯域を使うやや大型のFPVドローンを配備した」元米国防契約管理局(DCMA)品質監査官で、電子戦に詳しいトレント・テレンコはそう解説している。

並行して、ウクライナ軍は無人機や有人の軍用機でロシア軍の電波妨害装置を見つけ出しては破壊していった。そのため、ロシア軍はウクライナ軍のドローンがドニプロ川上空を飛行するのを妨げられなくなった。ウクライナ側がロシア側の電波妨害装置を精密攻撃で破壊した証拠はいくつもある。そうした装置には、トラックに取り付けられた移動式タイプもあった。

ウクライナ軍は電子面の対航空作戦を進めるかたわら、南部ザポリージャ州のメリトポリやトクマクを経てヘルソン州南部に通じるロシア軍の補給線の遮断にも取り組んだ。

ウクライナの陸軍や空中襲撃軍(空挺軍)の部隊はこの夏、多くの損害を出しながらもザポリージャ州ロボティネを突破し、ロシア軍の要衝となっているトクマクに向けて前進した。その結果、ロシア軍の兵站(へいたん)はウクライナ軍の長距離兵器の射程内にゆうに入るようになった。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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