だが、10月19日の襲撃はこれまでと違った。ウクライナ海兵隊の第38独立海兵旅団の部隊と伝えられる渡河部隊は対岸、つまりドニプロ川の左岸(方角で言えば東側)にとどまったのだ。
10日後もまだ、海兵隊部隊は左岸にいた。それどころか、ウクライナ軍のヘルソン州南部での攻撃拠点になっている5キロメートルほどの細長い集落、クリンキ周辺で支配区域を広げていた。
ウクライナ軍はドニプロ川左岸に橋頭堡(きょうとうほ)を確保した。この橋頭堡は、ウクライナ軍がヘルソン州の平野や湿地を南進し、ロシアの支配下にあるクリミア半島に向かう新たな反転攻勢に乗り出すうえで、不可欠なものだ。
海兵隊部隊がどのようにしてこの橋頭堡を防御し、拡大してきたのかは今や明らかだ。1980年代にさかのぼる古いPTS-2水陸両用輸送車に装甲車を積んで、川を往復させているのだ。今週、PTS-2が甲板に装甲車を載せてドニプロ川を渡っている映像がネット上に出回った。
First image of AFU armor, a BTR-4E “Bucephalus” on an amphibious transporter, arriving at the left bank of Kherson near #Krinky. #OSINT #Counteroffensive#UkraineRussiaWar#UkraineWar#Ukrainepic.twitter.com/nz2aEYQI63
— OSINT (Uri) 🇺🇦 (@UKikaski) November 6, 2023
PTS-2は古くて無骨な車両だが、ウクライナ軍が現在ヘルソン州で行っているような作戦では非常に役立つものだ。ウクライナ軍は2022年以前の時点で、重量24トン・乗員2人のこの水陸両用車両を15両前後保有していたと伝えられる。
PTS-2は旧ソ連で1960年代に開発されたPTSをアップグレードしたもので、ベース車両ではMT-T牽引(けんいん)車の車台、T-64戦車の走行装置、T-72戦車の720馬力エンジンを組み合わせている。歩兵75人あるいはトラックや装甲車を1両輸送できる。
PTS-2の積載能力はわずか12トンとされるが、独立調査グループのコンフリクト・インテリジェンス・チーム(CTI)によれば、今回目撃されたPTS-2は甲板にBTR-4歩兵戦闘車を載せていた可能性がある。
BTR-4は重量が17トンある。PTS-2の乗員は作戦の緊急性から、重量オーバーで車両が不安定になったり構造に負担がかかったりする危険を冒してでも、BTR-4を運ぶことにしたのかもしれない。