欧州

2023.12.07 09:00

ウクライナ軍のおばけドローン「バーバ・ヤハ」は夜中にやって来る

スラブ民話の魔女バーバ・ヤハ(バーバ・ヤガー)の仮装をした人(Shutterstock.com)

ウクライナ南部ヘルソン州のドニプロ川左岸(東岸)沿いにある集落クリンキの上空では日中、ウクライナ軍の自爆型FPV(一人称視点)ドローン(無人機)が何機も飛び回っている。夜中、これらのFPVドローンはどこかへ消えていく。そして、「バーバ・ヤハ」が隠れ家を抜け出してうろつき始める。

バーバ・ヤハはウクライナ軍の大型のヘキサコプター(回転翼が6つの航空機)ドローンだ。赤外線カメラを備え、最大15kgのロケット弾頭を搭載できる。名前はスラブ民話に登場する魔女にちなむ。

クリンキでは6週間前、ドニプロ川を渡ったウクライナの海兵部隊が橋頭堡(きょうとうほ)を築いた。ロシア軍の連隊や旅団はウクライナの海兵たちを排除しようと試みてきたものの、これまで失敗している。バーバ・ヤハは夜間、そうしたロシア軍部隊に取り憑き、野営地の上空に飛んでいっては樹冠の間から爆弾を落としている。

ウクライナ軍によるクリンキでの作戦では、電子戦部隊と連携したドローン運用部隊が、決定的に重要な戦力になっていると言っていいだろう。この作戦は外国の観察者やロシア側も驚かせ、ウクライナ軍が夏に開始した反転攻勢をこの方面で継続させる格好にもなっている。反攻はほかの方面では数週間前に終わっている。

第36独立海兵旅団の海兵たちがドニプロ川をモーターボートで渡り、一連の激しい歩兵行動によってクリンキからロシア兵を駆逐し出すのに先立って、ドローン部隊と電子戦部隊は戦場の準備に懸命に取り組んだ。

両部隊は無線妨害装置を設置してロシア側のドローンを飛行できなくするとともに、ロシア軍の無線妨害装置を破壊してウクライナ側のドローンを常時運用できるようにした。ドローン操縦士、情報分析官、砲兵が緊密に連携する迅速なキルチェーン(目標の探知から破壊にいたる一連の措置)も構築。ドローンによる襲撃を重ね、クリンキ上空で局所的な航空優勢を確保した。

たしかに、ロシア空軍は射程40kmの滑空弾を使ってクリンキをたたくことはできる。だが、クリンキのすぐ上の空域はウクライナ側が支配している。「彼ら(ウクライナ側)は近づくことも立ち去ることも許さない」とロシア側のある観察者は記している。「FPV(ドローン)がたちまち飛んでくるか、ウクライナ軍の迫撃砲が稼働する。わが軍の迫撃砲がどこかで射撃すれば、そこにウクライナ側からあれやこれやのものが飛んでいく」

「彼らの『鳥』は回転木馬のように入れ替わり立ち替わり飛来し、ブーンという音が森全体に鳴り響いている」と同じ人物は書いている。「彼らは道路を支配し、人を観察し、車両にはFPVがすぐに突っ込んでくる」
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翻訳・編集=江戸伸禎

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