欧州

2023.12.07 09:00

ウクライナ軍のおばけドローン「バーバ・ヤハ」は夜中にやって来る

スラブ民話の魔女バーバ・ヤハ(バーバ・ヤガー)の仮装をした人(Shutterstock.com)

ただ、クリンキ周辺のロシア兵も、夜間はドローンの絶え間ない攻撃からある程度解放されているだろう。ウクライナ軍もロシア軍もこれまで、小型の赤外線カメラを搭載した夜間用のFPVドローンを試しているが、現状ではまだ珍しい。主にカメラが高価なのが理由だ。
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FPVドローンは目標に突っ込んで爆発するので、いわば使い捨てになる。500ドル(約7万4000円)のFPVドローンに300ドル(4万4000円)の赤外線カメラを追加するのは、ウクライナの1000km近くにわたる前線で両軍とも1日に何百機ものFPVドローンを消費している以上、財政的にも兵站上も大きな課題になる。

しかし、繰り返し使用するドローンなら、小型赤外線カメラのコストは見合うものになる。ウクライナ軍が、1機1万2000ドル(約180万円)する「カジャン(コウモリ)」のような重量級のヘキサコプタードローンに赤外線カメラを搭載するのは、理にかなっているということだ。

日が沈み、FPVドローンが基地に戻ってくるころ、バーバ・ヤハは飛び立っていく。あるロシア兵は、最近あったバーバ・ヤハの襲撃の結果を撮影した動画を投稿している。その中でこの兵士は、大破した2台の車両のそばを歩きながら、地面にあるRPG(ロケット推進式擲弾)の不発弾頭を映し出している。「これが俺たちに落とされているものだ」

バーバ・ヤハは全知全能ではない。彼女は深い木々の奥までは見通せないので、弾頭をやみくもにばらばら落とすこともある。ウクライナのドローン指揮官であるロベルト・ブロブディは、動画を投稿したロシア兵に皮肉たっぷりに感謝している。「樹冠に遮られるので、(ドローンの)操縦士が結果を知るのはなかなか難しい」
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バーバ・ヤハはうるさいとも伝えられる。彼女がやって来るときにはロシア兵たちも気づくのかもしれない。

もっとも、バーバ・ヤハの音が聞こえるのと、バーバ・ヤハを飛べなくするのは別のことだ。「問題はわが軍の電子戦機器が存在しないか、彼ら(ウクライナ側)がまったく問題にしていないことだ」と前出のロシア側観察者は述べている。

「(無線妨害用の)スーツケースはあり、かなり優れたものだということだ」とこの人物は伝えている。もしクリンキのすべての家屋、ロシア側が支配する樹林帯に電波妨害装置が設けられ、ウクライナ側のドローンを妨害するがロシア側のドローンは妨害しないように、タイミングよくオン・オフを切り替えられるなら「おとぎ話のように(うまく)いくのだが」とも続けている。

おとぎ話は現実ではない。しかし、ウクライナ軍のバーバ・ヤハのほうはありありと存在し、活動している。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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