欧州

2023.10.07 09:30

ウクライナ軍の「吸血鬼」ドローン、その必殺兵器は対戦車地雷

安井克至

TM-62対戦車地雷(Shutterstock.com)

TM-62対戦車地雷は、ウクライナでの戦争を象徴する兵器の1つになっている。大量に地中に埋められたり、地表にばらまかれたりしている約11kgのこの地雷は、ロシア軍とウクライナ軍双方の攻撃を足止めし、多数の戦車やその他の車両を無力化してきた。現在、この地雷が、旧ソ連の開発者たちがまったく想定していなかったような方法で使用されていることが、最近の動画で明らかになった。ウクライナ側はTM-62を即席の航空爆弾として、比較的大型のドローン(無人機)から投下しているのだ。

ウクライナ空軍はこれまでに多数の航空機を失っているが、ドローン部隊は急速に拡大している。中国DJI製の「Mavic(マビック)」のような民生用クワッドコプター(回転翼4つのドローン)は30mmや40mmサイズの小さな擲弾(てきだん)を投下し、FPV(ファースト・パーソン・ビュー、1人称視点)自爆ドローンはより大きいRPG(対戦車擲弾)弾頭を搭載できる。さらに、より重武装のマルチコプター(回転翼が複数のドローン)も求められており、ウクライナ軍はすでにさまざまなタイプを実戦に投入している。

ウクライナ軍が運用している重無人爆撃機は主に、輸入部品を国内で組み立てて作ったヘクサコプター(回転翼が6つのドローン)やオクトコプター(同8つのドローン)となっている。よく知られているのは「カジャン(ウクライナ語で「コウモリ」の意味)」と「バンパイア(吸血鬼)」の2つだ。これらは、ミハイロ・フェドロウ副首相兼デジタル移行相が中心になって進めている「ドローン軍」構想でも紹介されている。

フェドロウは先ごろ、ドローン軍がバンパイア270機を前線に送ると明らかにしている。バンパイアは15kgの積載物なら約6.5km、10kgの積載物なら約9.5km航続でき、名前のとおり夜間攻撃用に赤外線の暗視装置を備える。CNNのニュース映像では、82mm迫撃砲弾3発でロシア軍の戦車を撃破している。 E620カジャンも夜間攻撃用に最適化されていて、近距離攻撃用に爆弾を最大20kg運ぶことが可能だ。こちらも通常、2発かそこらの82mm迫撃砲弾を搭載するとみられる。

カジャンの価格は1万5000〜3万ドル(220万〜450万円)と小型軽量のマビックの10倍はするものの、はるかに手強い目標を攻撃できる。

より大きな爆弾でより手強い目標を攻撃

迫撃砲弾は装甲車両に対して非常に効果的だが、掩蔽壕(えんぺいごう)やコンクリート製の砲床といったより手強い目標に対しては、さらに強力な爆薬が必要になる。つまり無人爆撃機の積載能力をもっと活用して、大型の爆弾を投下する必要が出てくる。そこでTM-62の出番というわけだ。TM-62はカジャンやバンパイアで運ぶのに手ごろなサイズで、利用しやすい既製品でもある。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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