欧州

2023.12.14 11:00

アウジーイウカ攻防戦で新局面 ロ軍、夜間のドローン攻撃で補給線遮断に動く

その場合、赤外線カメラを搭載した使い捨てのFPVドローンが決定的に重要な役割を果たすことになる。FPVドローンに暗視機能を追加するとコストが倍増する可能性があるため、ウクライナ軍では「バーバ・ヤハ」と呼ばれる、繰り返し使える比較的大型のドローンに赤外線カメラを搭載することを優先している。

ロシア軍は、たとえFPVドローンの1機あたりのコストが2倍に跳ね上がっても、24時間運用可能になることでウクライナ軍の補給路を塞げるのなら、追加コストは見合うものと判断するかもしれない。

激戦の末に陥落した東部ドネツク州の港湾都市マリウポリを例外として、ウクライナ軍は普通、最後の一兵になるまで戦い抜くということはしない。むしろ、ロシア軍が前進するごとに人員や装備に損害を与えながら、将来のために場所を放棄することが多い。

言い換えると、ウクライナ軍の守備隊は、孤立化する危険が迫れば撤退する。東部ルハンスク州のリシチャンスクやセベロドネツク、あるいはドネツク州バフムートでもそうした。ロシア軍の夜間飛行ドローンによって補給が不可能になれば、アウジーイウカでも撤収を選ぶだろう。

ロシア側が夜間のドローン攻撃に重点を移しつつあるらしいことに関して、もし朗報があるとすれば、それはウクライナ側がドローンに対抗する方法を知っているということだ。電子戦、具体的には、電波妨害装置によってドローンと操縦士の通信を遮断するというものだ。ウクライナの海兵隊が10月、南部でドニプロ川の渡河作戦に成功できた裏にも、こうした電波妨害作戦による入念な準備があった。

もっとも、高価な電子戦器材は不足している。また、電波妨害装置は敵のドローンだけでなく味方のドローンも飛べなくしてしまいやすいので、ウクライナ側が防御のために電波妨害作戦を実施する場合、攻撃能力に支障が出かねない点も考慮する必要があるだろう。

空とりわけ夜の空に警戒しなくてはならない。アウジーイウカの守備隊にとって、対車両、対徒歩兵に続く第3の戦いはそこで繰り広げられるかもしれない。それは、アウジーイウカ攻防戦の勝敗を決する戦いになる可能性がある。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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