食&酒

2023.12.10 19:00

白トリュフに魅せられた人々 「白い宝石」が日本に届くまで

シェフのルカ・ファンティン氏とトリュフハンターのシルバーノ・ロベタさんとその愛犬

集荷場に行くと、ウォークイン型の冷蔵庫の中に、すでに洗って、湿気を吸わせるための特別な砂をまぶした大小様々な白トリュフがあった。これだけの白トリュフを集める労力も膨大なものだろう。そして、中でも明らかに極上とわかる、ジャガイモ大のトリュフがゴロゴロと入っているカゴがあった。
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「日本行きのものです」とパリゾット氏が少し得意げにいう。「日本のお客様は良いものをよく知っている。香りだけでなく、形も綺麗な丸型で、大きなサイズのものを揃えています」。実際に買い付けの現場も見ても、このサイズのものは、数十個に1つあるかないかだろう。

そこには、白トリュフを愛好し、長年使い続けてきた日本のシェフとの、深い繋がりがある。

せっかくこの場にいるのだから、と、ファンティン氏は早速、日本向けのカゴの中から、香りを嗅ぎ、好みのものを選び出してゆく。丁寧に砂を払い、紙に包み、「L.F.」ルカ・ファンティンのサインを入れる。「ファンティンシェフのようなトップシェフの元に、自分たちのトリュフを届けられるのは誇り」だと、その様子を、パリゾット氏は嬉しそうに眺めている。

「きつい仕事だが、10代の頃、白トリュフを初めて見つけた時の感動が忘れられなくて、この仕事を続けている。極上のトリュフに出会った時の喜びは、今も変わらない。こうして、自分が扱うトリュフが海を超えて、素晴らしい料理として楽しんでもらえる」
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何十トンという白トリュフを扱ったキャリアの中で、記憶に残るトリュフは? とパリゾット氏に尋ねると、「2019年に採れた、1キロのもの。もちろん、ルカに送ったよ」という答えが返ってきた。そのトリュフを東京で受け取り、各レストランに送るのが、パリゾット氏と共に働くリカルド・バッソ氏の役割だ。

「10年前に、トリュフの会社を作ろうと白トリュフを持ち込んだ時に、その質を見抜き、いち早く取引を始めてくれたのがファンティン氏だった。そのおかげで日本のビジネスを拡大し、トリュフだけでなく、チーズや生ハムなど、イタリア食材全般を輸入する大きな会社にすることができた」と2人は口を揃え、心から感謝しているという。

その1キロのトリュフの写真は、ファンティン氏とパリゾット氏、バッソ氏、それぞれの携帯のアルバムに、大切に保存されていた。天然だからこそ、一つひとつが一期一会。

私たちがレストランで目にする貴重な白トリュフの裏には、一つ一つの物語がある。人の手から手へ、惜しみない労力をかけて大切に届けられるまさに「馳走」なのだと、実際にその現場を見て実感した。パスタに、リゾットに。そっと削りかけられるひとひらひとひらに込められた想いと共に、大切に味わいたい。

文・写真=仲山 今日子

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