しかしウクライナ軍は来年、損失分を補って余りあるほどのレオパルト2を取得できる可能性が高まってきた。保有数を大幅に増やせることも十分考えられる。すべてはスイス人の几帳面さと、ドイツの当局者がスイスを相手に重ねてきた粘り強い外交努力のたまものだ。
1980年代後半、スイス軍はレオパルト2A4(重量60トン、乗員4人)の機関銃と無線システムをスイス製に換装したパンツァー(Pz.)87戦車を380両調達した。2010年代に入り、うち134両を継続使用するため改修した。スイスは余剰になったPz.87戦車の一部を売却し、残り96両は保管した。
これら100両近くのPz.87は、各国にあるレオパルト2A4のなかでも最も保管状態が良い部類に入るといわれる。ウクライナは当然のことながら、ドイツなどの仲介によってこれらの戦車を手に入れたいと考えてきた。だが問題があった。スイスが堅持している厳格な中立政策である。
それでもドイツは1年以上かけて取引をまとめ、スイスの議会や政府の承認にこぎ着けた。スイス連邦参事会(内閣)は22日、25両のPz.87を製造元のドイツ企業ラインメタルに引き渡すことを承認した。これに先立って、引き渡しはスイス連邦議会でも承認されていた。
ただし、これらのPz.87がウクライナに行き着くことがないようにするという条件が付けられた。「非常に重要な点は、これらの戦車はドイツまたは北大西洋条約機構(NATO)もしくは欧州連合(EU)加盟国にとどまり、用途は不足分を補うことに限られるとドイツ政府が保証したことだ」とスイス政府は説明している。
抜け道は簡単に見つけられる。ラインメタルはスイスからPz.87を引き取ったあと、レオパルト2A4を運用している国に売却する。取引にはドイツ政府が融資するかもしれない。そして、購入した国は、浮いた分のレオパルト2A4をウクライナに無償供与する──。
実のところ、ドイツはこれまでもこうした循環スキームでウクライナに武器を手配してきた。たとえばチェコにはドイツからレオパルト2A4を14両送り、代わりにチェコから旧ソ連時代の古いT-72戦車少なくとも50両をウクライナに送ってもらっている。