欧州

2023.11.21

ロシア軍、対戦車ミサイルをクレーンから発射 不格好だが「合理的」

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ロシアの対戦車ミサイルシステムが建設用か整備用の車両の伸縮式クレーンアームに装着された映像を見て、既視感を覚えた軍事史家もいるかもしれない。

こうした試みをした軍隊はロシア軍が初めてではなく、それにはもっともな理由もあった。武器を高い位置に持ち上げれば、木々や丘のような障害物に妨げられず射撃できる。考え方としては理にかなったものだ。

問題は、発射機を付ける部分の安定性、展開などに要する時間、そしてコストだ。

専用のクレーン兵器がないため、ロシア軍は即席でつくった。週末にオンラインで拡散した動画には、ロシアの占領下にあるウクライナのどこかとみられる森の中で、民生用クレーンが駐車しているところが映っている。クレーンの長いアームは木々の上あたりまで伸び、先端のバケットには対戦車誘導ミサイルシステムが取り付けられている。

ミサイルの運用者もバケット内に座るのだろう。そこからは、森を越えて、もしかすると数km先の目標まで、はっきりとした照準線(LOS)を確保できるのかもしれない。

対戦車誘導ミサイルではLOSが何より重要だ。大方の対戦車ミサイルはレーザーか無線、もしくはミサイルの後部から伸びるワイヤーを介して中継される直接コマンドで誘導される。目標までの明確な経路に加え、運用者が攻撃の完了を見届けるためにミサイルと目標を両方視認できることも必要になる。

対戦車ミサイルの発射台を高くすると、大きな違いが生まれる。米陸軍のM2ブラッドレー歩兵戦闘車を例に考えてみよう。M2の砲塔には主砲などのほかに、有線で誘導するTOW対戦車ミサイルの2連装発射機が搭載されている。M2は車高が3m近くと、戦闘車両としても高く、M1エイブラムス戦車より数十cm高い。車高の高さがあるために、M2は優れたミサイル発射台にもなっている。

これは湾岸戦争中の「73イースティングの戦い」でも実証された。1991年2月にあったこの戦闘で米陸軍のM2は、砂塵が舞う戦場でイラク軍のMT-LB装甲けん引車などと交戦した。米国防分析研究所(IDA)のゲーリー・ブルードーンはこの戦闘に関する1992年の論考で、ブラッドレーの熱映像照準器はM1よりも33cmほど高い場所にあるという点に留意を促したうえで、こう続けている。

「ブラッドレーは(砂塵が舞う)こうした中でも、MT-LBをより遠くまで視野に入れ、より素早く捕捉できた。そしてTOWミサイルの信頼性は絶大だった。TOWを発射すると、まさに狙ったところに撃ち込まれた」

1991年には30cm強高いだけで、対戦車ミサイルの射手にとって違いが出ていた。2023年に15mも高さを上げられるなら、どんなに大きな違いが生まれるか想像してほしい。ロシア軍のミサイルクレーンは不格好かもしれないが、戦術上もっともな要請に応えたものなのだ。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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