だがこの損失は、自由なウクライナを支持する人たちにとってむしろ朗報だ。理由はこのハンビーが乗り捨てられていた場所にある。そこはドニプロ川の左岸(東側)だったのだ。
ドニプロ川の左岸地域はほとんどがロシアの支配下にある。ウクライナ軍部隊は10月下旬以降、波状的な襲撃を通じてドニプロ川左岸に狭い橋頭堡(きょうとうほ)を築いていた。ハンビーがドニプロ川左岸にあったということは、ウクライナ軍がこの広い川を渡らせて、橋頭堡との間で車両を行き来させるのに成功したことを意味する。
🇺🇦⚔️🇷🇺 Positive news! Footage of an allegedly Ukrainian HMMWV burning in the vicinity of Krynky. It got stuck and was abandoned. More equipment crossing over? pic.twitter.com/5qIgn1Tda0
— Astraia Intel 🇺🇦🇮🇱 (@astraiaintel) November 7, 2023
「(ウクライナ側は)陣地を保持し、ドニプロ川を越えて装甲車両を運び込んでいる」ともこの人物は述べている。ドニプロ川を渡る車両が増えるごとに、ウクライナ軍が橋頭堡を保持し、拡大するチャンスは高まることになる。
ウクライナ軍が5カ月におよぶ反転攻勢で新たな戦線を開いたというのは、現段階では時期尚早かもしれない。だとしても、そういえる日が来るのは遠くないだろう。
ウクライナ軍は2022年末、ドニプロ川右岸のヘルソン州北部一帯を解放した。以来、ドニプロ川を越えて小規模な襲撃をたびたび仕かけてきた。通常は、ロシア兵数人を殺害もしくは捕虜にし、ロシア側にある程度の損害を与えたあと、砲撃やドローン(無人機)による攻撃が始まりそうな頃合いに撤収する。
だが、10月19日に始まった渡河作戦は違った。今回ドニプロ川を渡ったウクライナ軍部隊は撤収せず、左岸にとどまった。ウクライナ海兵隊第38独立海兵旅団の一部とされるこの部隊は、作戦開始から10日後、まだ左岸にいるばかりか、川沿いにある集落クリンキ周辺で支配区域を広げている。5キロメートルほどの細長いこの集落はにわかに、ウクライナ軍によるヘルソン州での主要な攻撃地点になった。
ロシア海軍歩兵隊(海兵隊)の第810独立親衛海軍歩兵旅団に所属するある隊員は、旅団が置かれている状況を「非常に困難」と表現している。「(ウクライナ側は)ひっきりなしに私たちを砲撃してくる。クラスター弾も使っている。そして何より、FPV(1人称視点)ドローンや投下物を搭載したドローンの大群を24時間用いている」