欧州

2023.11.09 09:30

ウクライナ海兵隊、ドニプロ川左岸に装甲車両運搬 新たな前進へ橋頭堡広げる

ドニプロ川。ウクライナ南部ヘルソン州で(Shutterstock.com)

ウクライナ軍はここ数日の間に、南部ヘルソン州で米国製の軍用車両「ハンビー」1両を遺棄した。ロシア軍部隊はそれを破壊し、焼失させた。

だがこの損失は、自由なウクライナを支持する人たちにとってむしろ朗報だ。理由はこのハンビーが乗り捨てられていた場所にある。そこはドニプロ川の左岸(東側)だったのだ。

ドニプロ川の左岸地域はほとんどがロシアの支配下にある。ウクライナ軍部隊は10月下旬以降、波状的な襲撃を通じてドニプロ川左岸に狭い橋頭堡(きょうとうほ)を築いていた。ハンビーがドニプロ川左岸にあったということは、ウクライナ軍がこの広い川を渡らせて、橋頭堡との間で車両を行き来させるのに成功したことを意味する。

ウクライナ軍の重装備がドニプロ川を渡河していることを示す証拠は、燃えていたハンビーだけではない。7日、ロシアの空挺(くうてい)兵らしい人物は通信アプリ「テレグラム」の人気チャンネルで、ウクライナ側は「左岸に移ってきただけでなく、岸辺のいくつかの陣地を奪い、複数の集落の一部を支配した」とこぼしている

「(ウクライナ側は)陣地を保持し、ドニプロ川を越えて装甲車両を運び込んでいる」ともこの人物は述べている。ドニプロ川を渡る車両が増えるごとに、ウクライナ軍が橋頭堡を保持し、拡大するチャンスは高まることになる。

ウクライナ軍が5カ月におよぶ反転攻勢で新たな戦線を開いたというのは、現段階では時期尚早かもしれない。だとしても、そういえる日が来るのは遠くないだろう。

ウクライナ軍は2022年末、ドニプロ川右岸のヘルソン州北部一帯を解放した。以来、ドニプロ川を越えて小規模な襲撃をたびたび仕かけてきた。通常は、ロシア兵数人を殺害もしくは捕虜にし、ロシア側にある程度の損害を与えたあと、砲撃やドローン(無人機)による攻撃が始まりそうな頃合いに撤収する。

だが、10月19日に始まった渡河作戦は違った。今回ドニプロ川を渡ったウクライナ軍部隊は撤収せず、左岸にとどまった。ウクライナ海兵隊第38独立海兵旅団の一部とされるこの部隊は、作戦開始から10日後、まだ左岸にいるばかりか、川沿いにある集落クリンキ周辺で支配区域を広げている。5キロメートルほどの細長いこの集落はにわかに、ウクライナ軍によるヘルソン州での主要な攻撃地点になった。

ロシア海軍歩兵隊(海兵隊)の第810独立親衛海軍歩兵旅団に所属するある隊員は、旅団が置かれている状況を「非常に困難」と表現している。「(ウクライナ側は)ひっきりなしに私たちを砲撃してくる。クラスター弾も使っている。そして何より、FPV(1人称視点)ドローンや投下物を搭載したドローンの大群を24時間用いている」
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翻訳・編集=江戸伸禎

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