ビジネス

2023.03.03 12:30

「無意識バイアス」にビジネスで冷や汗 読者投稿に心理学者相川先生が応えた


百瀬麻衣子(仮名・編集者)さんからの投稿


あるWeb記事でAbdullah Al Nomanさんという人に興味を持ち、連絡を取るためにGoogle検索し、結果に表示されたNomanさんにダイレクト・メッセージ(Facebookのアカウントへ)を送ってみたところ、「同姓同名の別人」だった。


日本語の名前なら、たとえば田中雅子さんだと日本には何人がいるかな?と疑うが、自分にとっては外国人の名前であり、それだけで「エキゾチックに」「他にはない」印象を受けてしまったゆえの失敗でした。

調べると「Abdullah」も「AI Noman」もイラク、サウジアラビア系、米国系にはわりとよくある姓名のようでした。「よく知らないもの」とかく一意に(ユニーク)に見えてしまう、という気づきと反省でした。

相川先生のアドバイス


外国人名の同姓同名の別人に、誤ってメールを送ってしまった、という百瀬さんの体験。この体験から百瀬さんは「ビジネスのフィールドが世界規模になった今は、同姓同名の人が居るから気を付けるべきだ」という気づきを得たのかと思いきや、百瀬さんが得たのは、「よく知らないものは、とかく一意に(ユニーク)に見えてしまう、という気づきと反省」だったとは、私の予想を超える意義深い認識です。

百瀬さんの話を読んで、「確かに、よく知らないものは、ユニークなものだという思い込みは、高い頻度で繰り返される思い込みの一つだ」と気づかされました。

私たちの頭の中には、これまでの人生で溜め込んだ、さまざまな「情報のかたまり」があります。多種多様な、さまざまな「情報のかたまり」があるにもかかわらず、どの「情報のかたまり」の中にも、まだ組み込まれていない情報に初めて接したなら、その情報がユニークである確率は高いです。ですから、「よく知らないものだから、ユニークなものだ」という判断は、たいてい、まちがえではありません。

それでも「よく知らないものだから、ユニークなものだ」が、誤った思い込みになってしまった場合は、「よく知らないもの」という前提の方に原因があります。「よく知らない」のは、自分だけかもしれないのです。ほかの人たちは、よく知っていて、自分だけがよく知らないにもかかわらず、「自分がよく知らないこと=ほかの人たちも、よく知らないことだ」という前提が、まちがえの元です。

自分がよく知らないものでも、ほかの人たちが、よく知っていることならば、ユニークなものではない確率は高いのです。

「自分がよく知らないこと=ほかの人たちも、よく知らないことだ」という前提を生む心の働きは、「自分がよく知っていること=ほかの人たちも、よく知っていることだ」という前提も生み出します。

私たちは、「自分が知らないことは、ほかの人たちも知らないことであり、自分が知っていることは、ほかの人たちも知っていることだ」という前提に立ちやすいのです。「自分の考えや信念や行動は、多数の人たちと同じだ」という前提は、要するに「自分は多数派に属している」という前提です。

実際は、逆に、自分が知らないこと/知っていること、思っていること/思ってもいないこと、考えていること/考えていないことは、少数派かもしれないのです。
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文=相川 充 編集=石井節子

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