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2023.03.03

「無意識バイアス」にビジネスで冷や汗 読者投稿に心理学者相川先生が応えた

東京学芸大学名誉教授 相川充氏(写真提供:レアリゼ https://www.realiser.co.jp/)

では、世代間ギャップの悲劇を防ぐには、どうしたら良いのでしょうか?

世代間ギャップの悲劇を防ぐためには、古い世代の人たちが、新しい世代の価値観や考え方を素直に受け入れることです。

古い世代の人が、古い価値観を振りかざしていては、会社や組織は変化しません。過去の価値観の踏襲だけでは、会社や組織は活力を失い、停滞し、やがて衰退してしまいます。古い世代の人たちが、新しい世代の価値観を受け容れて、会社や組織の価値観が変われば、会社や組織の活動が活発になり、現状よりも良い状況が生まれる可能性が増えます。

「いや、新しい価値観が悪い状況を生む恐れもある」と、価値観の変化を恐れる人もいますが、価値観の変化が良い結果をもたらすのか、悪い結果をもたらすのかは、変化した後でなければ判断できません。まずは変化してみることです。

変化するべき時に、古い価値観が妨げにならないように、古い世代の人たちは、逆らわず、抵抗せず、受け身になって、新しい価値観を、とりあえず受け入れてみましょう。受け入れたうえで、自らの行動や組織の在り方などを変えて、そのあとに、新しい価値観が良い変化をもたらしたのか否かを判断しましょう。

Getty Images

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古い世代の人たちにとって、長い年月の中で体験し、獲得してきた価値観は、「今や古い」と言われても、簡単には捨てられません。古い価値観は、捨てなくても良いのです。古いと言われる価値観を持ちつつも、それとは別の新しい価値観も受け入れて、古い価値観と新しい価値観を併存させればよいのです。価値観の種類が増えるだけです。

「穴が開いているジーンズは素敵だ」という価値観を受け容れても、穴の開いていないジーンズを捨てる必要はないのです。穴の開いていないジーンズを持ったまま、穴の開いたジーンズの価値も受け容れれば良いのです。

世代間ギャップの悲劇を減らすためには、新しい世代の人たちは、自分たちの価値観を古い世代の人たちに押し付けるのではなく、自分たちの価値観を楽しみましょう。

自分たちの価値観に基づいた変化や活動が、自分や、会社や組織にとって、何をもたらしてくれるのかを、自分自身で味わい、しっかり観察するのです。そして、新しい価値観を楽しんでいる姿を、古い世代の人たちに見せてあげましょう。新しい価値観がもたらすポジティブな変化を楽しむことによって、古い世代の人たちにアピールするのです。

それでも古い世代の人たちが、新しい価値観に抵抗を見せるようならば、新しい世代の人たちは、古い世代の人の立場から、新しい価値観を眺めてみましょう。「自分が古い世代の人間だったら、この新しい価値観はどのように見えるのか」と想像してみるのです。

おばあちゃんやおじいちゃんの目には、穴の開いたジーンズは、どうみえるのか想像力を働かせてみるのです。古い世代の人たちの目で、新しい価値観を見てみることで、新しい価値観の意義が深く理解できたり、新しい価値観の別の側面が発見できたりします。
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文=相川 充 編集=石井節子

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