相川先生のアドバイス
島さんのお話の最後に書かれている「情報としてはすでに知っていたのに、新しい価値観が染み込むまでには時間がかかる、と思った」を読んで、私は「まさに、その通りです!」と言いました。私たちが持っている偏見や差別意識が、理屈ではわかっても、容易には変わらないことを島さんは実体験を通じて認識されたのです。
私たちの頭の中には、様々な情報や知識や記憶などの「情報のかたまり」がたくさんあります。「セーラー服の制服」についての「情報のかたまり」もあれば、その隣に「スラックスの制服」についての「情報のかたまり」も、あるでしょう。この2つの「情報のかたまり」を分けているのは、女性用か男性用かという性別だったのです。
ところが最近になって、2つの「情報のかたまり」を分けていた性別が取り払われました。その結果、「セーラー服の制服」と「スラックスの制服」という2つの「情報のかたまり」は、たとえば「性別のない自由な制服」という「情報のかたまり」になったはずです。ただし、2つが1つになってできた新しい「情報のかたまり」には、以前のそれぞれの「情報のかたまり」の痕跡が残っています。
そのため、つい、古い痕跡で物事を判断して、「上着がセーラー服で下はスラックスって、なにそれ?」と驚いたり、理屈では分かっていても、感情的には以前の差別意識が頭を持ち上げて「そんなの女の子らしくない」などと感じたりします。
新しい情報、たとえば「セーラー服+スラックスの制服」という情報を、それまでの「情報のかたまり」、たとえば「中・高校生の制服」という「情報のかたまり」の中に取り入れるときに、論理的に取り入れるだけでなく、心的イメージで、たとえばイラストや写真などで取り入れると、古い「情報のかたまり」は、新しい「情報のかたまり」になりやすいと言われています。
島さんの場合も、最初のニュース「女子生徒もパンツスタイルの制服を選択できる」を聴いたときに、パンツスタイルの女子生徒の具体的な姿を頭に思い描いて記憶すれば、あとのニュース「セーラー服+スラックスの制服導入」を見ても、驚かなかったかもしれません。