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2023.03.03 12:30

「無意識バイアス」にビジネスで冷や汗 読者投稿に心理学者相川先生が応えた


「自分の考えや信念や行動は、多数の人たちと同じだ」という前提に立っていることは、日常会話では、自分の考えや意見を主張するときや、自分が既に行っている行為をほかの人に薦めるときに使う「“みんな”が、こうしている」「“普通“、こうするよ」などという表現に現れます。

「みんな」なのか「普通」なのか、客観的な事実や情報がないにもかかわらず、自分が考えていること、自分が行動していることは、ほかの多数の人と同じだという前提に、意識せずに立っているのです。この前提に立ってしまうのは、「自分は、ほかの多数の人たちと同じだ」と思うことで、安心が得られるからです。

とくに、ほかの人たちに同調することを重視する日本人は、根拠がなくても無意識のうちに「自分は、ほかの多数の人たちと同じだ」という前提に立ちやすいと言われています。

「自分の考えや信念や行動は、多数の人たちと同じだ」という前提に立って、ほかの人に接すると、こちらが「当然のことだ」と思っていることが相手には意外だったり、予想外だったりします。

たとえば、こちらが、誰もが使っている単語のつもりで使っても、相手にとっては意味不明の専門用語や業界用語かもしれません。このような齟齬がビジネス現場で起これば、せっかくのビジネスチャンスを逃したり、大きなマイナスの結果を生んでしまったりします。

「自分の考えや信念や行動は、多数の人たちと同じだ」という根拠のない前提に立つことで招いてしまう失敗や失態を防ぐには、どうしたらよいでしょうか?できるだけ多方面から、客観的情報を手に入れたり、複数の意見に耳を傾けたりして、自分の考えや信念や行動が、多数と人達と同じであるかどうかを確認することです。手間ヒマがかかりますが。

百瀬さんが、Abdullah Al Nomanは、「自分がよく知らない名前だから=ほかの人たちのよく知らない名前だから、ユニークな名前だ」と思いこむ前に、百瀬さんが事後に行ったGoogle検索を、事前に行っていればよかったのです。

「調べるとAbdullahもAl Nomanもイラク、サウジアラビア系、米国系にはわりとよくある姓名」という情報を、事前に得ていれば、「よくある名前だから、Google検索で見つけたAbdullah Al Nomanは、同姓同名の別人の恐れがある」という判断ができたかもしれません。

masterzphotois / Getty Images

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文=相川 充 編集=石井節子

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