相川先生のアドバイス
横田さんは、薬をまちがえて服用したのに、薬の副作用で体を傷めることがなくて、良かったですね。横田さんの場合は、まちがえた薬で体を傷めなかったどころか、痛風の痛みが改善したのですから、ラッキーでした。なお、横田さんの場合、改善したのは痛風ではなく、痛風の痛みであることは、以下の私のコメントで、重要な点です。
薬効がない薬でも、薬効がある薬だと信じて飲んだ人の症状や痛みに、改善効果が起こることは、医学や薬学の領域、心理学の領域では、とても有名な現象です。「偽薬効果」と呼ばれています。
薬には偽薬効果がありますから、製薬会社は、新しく開発した薬が本当に効果を持つのかどうかを実証実験するときには、新薬を与える人たちのグループA群と、薬を何も与えない人たちのグループB群だけでなく、薬効が何も無い薬を与える人たちのグループC群を設定します。A群とB群を比べて、薬の効果が表れたとしても、A群の人たちは、「自分は薬を飲んだ」ということを知っていますので、そのことが身体や症状の改善につながったかもしれないからです。
そこで、A群と同じように「自分は薬を飲んだ」ということを知っているC群とも比べてみるわけです。A群が、C群と比べても薬効が表れていれば、単に「薬を飲んだ」と思ったことによる効果ではなくて、新薬の薬効であると実証できます。
偽薬効果がなぜ起こるのかは、医学的には今も完全には解明されていませんが、偽薬効果が起こるときのポイントは、「信じる」ということです。
単に「自分は薬を飲んだ」ということを知るだけでなく、「自分が飲んだ薬は効果がある」、さらには「自分は、効果のある薬を飲んだのだから良くなるはずだ」と信じることです。強く信じれば信じるほど、偽薬効果は起こりやすくなります。横田さんの場合も、「ピンクの薬は痛風の薬だ。これを飲めば痛みが改善するはずだ」と信じたので、実際に、痛みの緩和が起こったのでしょう。
偽薬効果は、信じることがポイントですので、医学や薬学の領域だけでなく、心理学の領域でも研究がおこなわれてきました。心理学の領域では、偽薬効果は、薬に関連することだけで起こる現象ではなく、薬以外のものでも起こり得ると考えています。たとえば、宗教儀式です。