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2022.03.19 11:30

ラグジュアリーな食の責任をとる。母校と組んだ庄司夏子の覚悟

鈴木 奈央
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「été」の庄司夏子(中央)

この連載を続けて一年以上になるが、女性シェフの登場は初めてである。飲食業界の中でまだまだ女性が活躍しにくいという現実は当然あるが、同時にマクロ的思考を備えた女性料理人が少ないということにも起因するのではないだろうか。

そんな中で、次世代にいかに持続可能な食環境づくりの意識をつないでいくかという問題に真摯に向き合っているのが、「été」の庄司夏子オーナーシェフである。2020年に「アジアのベストレストラン50」でベストパティシエ賞を受賞、2022年には栄えあるアジアのベスト女性シェフ賞を受賞することが決まった(アワードは3月29日)。

彼女の、ゼロウェイストプロジェクトのことを知ったのは、奇しくもその受賞が発表されることになる日の午前中、SNSによってだった。母校の調理師学校、近隣の駒場学園高等学校とタッグを組んで、完全消滅型バイオ式生ゴミ処理機を導入し、生ゴミを液肥にし、菜園を活性化するという活動だ。早速取材を申し込んだ。

ディズニーランドがヒントに


庄司氏は、2016年から、母校の講師を一年に一度務め続けている。それは自ら手を挙げてのことという。「例えば開業のためのお金のことなど、学校では教授されないことなどを教える場を設けてあげたかったんです」と理由を話す。

ここ3年ほどは、それに加え、持続可能な食の未来に関してのことを多く語るようになったそうだ。学生時代にSDGsの大切さを学び、それが世界のスタンダードであるとマインドセットすれば、積極的に行動をおこせるようになり、新しい未来が生まれると考えたからだ。



「実は4年ほど前から、主にケーキを作る際のフルーツの皮などを、家庭用のコンポストで液肥にし始めたんです」と庄司氏。幻のケーキと称されるほど人気の「été」のケーキだが、フルーツの皮が大量にゴミとして廃棄されるのが、いやでたまらなかったそうだ。

それでコンポストを導入したが、小規模体制でゼロウェイスト活動を粛々と続けていくことに、ずっと、もやもやとしたものを抱えていたという。もちろん、それ自体、評価すべきことだが、地球規模で持続可能な未来を考えたときに、役に立つにはあまりに小さな善行であるということが引っかかっていたのだ。

そんなときに、お客様から、ディズニーランドの話を聞き、大きなひらめきとなったそうだ。ディズニーランドの膨大な食品ゴミはほぼ100%リサイクルされている。あまり知られていないが、実はバイオガスとして熱源に利用されたり、飼料や肥料になるのだという。その発想、規模感、仕組みに感動した。
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文=小松宏子

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