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2022.03.19 11:30

ラグジュアリーな食の責任をとる。母校と組んだ庄司夏子の覚悟


今回導入した完全消滅型バイオ式生ゴミ処理機は、バクテリアの働きによって生ゴミを炭酸ガスと水(液体肥料)に分解する、環境に優しい生ゴミ処理機だ。今では、定期的に「été」の生ゴミを学校にもって行っている。

しかし、せっかく液肥を作っても、使うとこころがなくては片手落ちになってしまう。そこで、放っておかれた菜園を、生徒達が耕し、課外授業で作物を作るようになったという。

豊かな実りをもたらすその菜園でできた野菜は、収穫の喜びを感じ、食材の尊さを体験するために実習で使うのにあてているが、時に「été」の厨房で使うこともあるという。このように大きな組織が先頭に立って導入すれば、他の学校や企業がそれに続き、社会的な“エシカルスタンダード”となると考えられる。この活動を通じて、人や自然に積極的に変化が生まれることが、庄司氏の願いだ。



世界に出て感じる日本の遅れ


世界的な食のイベントなどで海外に行く機会が増えている庄司氏だが、海外のシェフや料理関係者と話すと、日本がいかに遅れているかがよくわかるという。

昨秋にアントワープで開催された「世界のベストレストラン50」のアワードでは、女性シェフだけが集まる朝食会が行われたが、そこでは、レストランでのコンポストはあたりまえ。マンションなどには共有のコンポストがついている時代という話になった。欧米のそんな事情を聞いて愕然したという。

今年2月にアブダビで行われた「ミドルイーストベストレストラン50」でのコラボレーションディナーでも、ゴミの問題はあたりまえのように、きちんと処理されていたそうだ。このままでは世界に追いていかれるという切迫した気持ちは今も強く、この活動をさらに定着させるとともに、若い世代への普及は今まで以上に積極的に行っていくつもりであるという。



これまでこのプロジェクトのことを表に出してこなかったのかと尋ねたところ、「結果が出てからでないと、公表してもしょうがないじゃないですか」という。

「何キロの液肥ができて、菜園からも、しっかりと作物が収穫できるようになった。その事実を口外できるようになるまでは言いたくなかったんですね。中途半端な状態では。やっと自信を持って、発表できるまでになりました」

実際、2020年には4.5トンの生ゴミの再生利用を達成している。5年後の2026年には13トンの生ゴミを液肥に再生する見込みだそうだ。そんなところにも、庄司氏のブレない芯の強さが感じられるではないか。
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文=小松宏子

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