酒提供なしの「日本料理店」が、中東・北アフリカNo.1になった理由

「中東・北アフリカベストレストラン50」授賞式にて

ファインダイニング(洗練された美食)という意味では、まだまだ知られていない部分も多い中東・北アフリカ。そんな土地を舞台に、「世界のベストレストラン50」の地域版「中東・北アフリカベストレストラン50」が立ち上がり、2月7日、アラブ首長国連邦でその授賞式が行われた。

対象となった国は、中東14カ国(アラブ首長国連邦、バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、イスラエル、ヨルダン、レバノン、パレスチナ、シリア、イラン、イラク、サウジアラビア、イエメン)と、北アフリカ5カ国(アルジェリア、モロッコ、チュニジア、エジプト、リビア)。よほどの旅好きでもない限り、訪れることのないだろう国も多い。

2回のワクチン接種と96時間以内のPCR検査の陰性証明の提示を条件に、会場となったコンラッド・アブダビ・エティハド・タワー・ホテルのボールルームには約600人の受賞シェフやメディア、関係者が集い、この地域を横断的につなぐ新しいアワードの誕生を祝った。

なぜ、日本料理が人気?


さて、その結果は。驚くべきことに、発表された50店のうち15店が日本料理店、もしくは「居酒屋風」など日本料理に影響された店だった。ナンバーワンに輝いた「3 fils(スリーフィルス)」も、日本料理に強く影響を受けている。



19カ国の頂点に立った「3 fils」は、2016年、アラブ首長国連邦にオープンした。オーナーは地元出身だが、ヘッドシェフはコンゴ民主共和国、ペストリーシェフはスペイン、マネージャーはシリア出身。加えて、メニュー考案を行うのは日本人のコンサルティングシェフと、多国籍な構成だ。オーナーが敬虔なイスラム教徒ということもあり、店でアルコールは一切提供していない。

今回の結果を受けて、オーナーのアメッド・サァリィさんは、「予約を取らず、気軽に立ち寄れるカジュアルな雰囲気の海辺のレストラン。質の良い料理とホスピタリティがあるのが、店の魅力では。地元の人が支えてくれたからこその結果で、No.1としての責任も感じるし、チームを誇りに思う」と語った。

そもそも、なぜこのように多くの日本料理店がランクインしたのか。現地の人は日本料理をどのように捉えているのか。サァリィさんに尋ねると、「毎日の継続的にきちんとした仕事を繰り返すことが、質の向上にはとても大切なこと。そんな日本料理の精神性に深く感銘を受ける」という答えが返ってきた。

また、ヘッドシェフのフレディ・カザディ氏は「中東の料理は油ベースだが、日本料理は油に頼らず、旨味を中心に構成されている料理」と、日本料理のヘルシーさも人気の秘訣だと考えているという。


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文=仲山今日子

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