インスタグラムなどの投稿で、彼女がつくる“幻のケーキ”を見たことがある人も多いのではないだろうか? 7年前に誕生し、食通やインフルエンサーから火がついたマンゴーのタルト「フルール・ド・エテ」は、一躍彼女をスターダムに押し上げた。
コロナ禍の昨年は、渡航自粛で世界的なクリエイターが日本にいることを逆手にとり、村上 隆やVERDYなどとコラボレーションを展開。また、1組限定、6席のみのエクスクルーシブなレストランは、密を避けて安心して食事できる空間として、予約が絶えなかった。
現在31歳。形容詞のように使われる“若い女性”というレッテルも「絶対的にキャッチーなので」と受け止め、「レストラン界における“日本人女性初”は全部もらおうと思って」と利用する。東京のレストランシーンで異彩を放つ彼女を突き動かすものとは。
「何料理か」より、「美味しいか」
レストランの評価といえば「ミシュラン」が有名だが、昨今、より注目度が増しているのが「世界のベストレストラン50 / アジアのベストレストラン50」だ。毎年、レストラン関係者やジャーナリストらの投票により、各エリアから50軒のみが選出される。
庄司は昨年、同アワードで特別賞「アジアのベストパティシエ賞」を受賞。今年は、100位まで発表されることとなったランキングで、見事83位にランクイン。代名詞であるケーキだけではなく、シェフとしての総合的な実力が評価された。
昼・夜ともに1日1組限定のétéでは、料理からワインの選定に至るまで、庄司がすべてを取り仕切る。料理は、フレンチをベースとしながらも、和食や中華などのエッセンスも取り入れた独自のスタイルだ。そこに行き着いたのは、「自分で接客もするから」なのだという。
「私は現代フランス料理のお店で修行していたので、その世界はずっと憧れだし、重たいソースやジビエも好きですが、お客さまは“より軽いもの”を好むようになっているんですよね。だから、フレンチのテクニックを使いながら、フランス料理じゃないかもしれないけれど“美味しいもの”を追求するようになりました。『何料理?』って聞かれることもありますが、私はなんでもいいと思っています」
étéのシグニチャー「甘鯛の鱗揚げ」(c) Ippei Ishihara
その「なんでもいい」は、自分のこだわりよりも、ゲストを最優先するからこその言葉だ。「いくらうちのシグニチャーでも、出したときに表情が曇ったり、箸が進んでなかったりしたら次回は出さないですね。お客さまがノーと言ったらノーなんです」