ソールとして、合成ゴムは耐久性やグリップ力が高く、EVAは軽くてふわりとした履き心地が特徴だが、それらよりもパフォーマンスが高く、かつ“土に還る”という画期的なソールが開発された。アパレルブランドをプロデュースするファイブトウキョウが手がける「GENN(ジェン)」だ。スニーカーで社会課題の解決を目指す同社代表の齊藤裕介氏に話を聞いた。
──スニーカーがもたらしている環境問題について教えてください。
現在、靴の生産数は世界で年間250億足と言われています。世界の人口が77億人なので、結構な量ですよね。そのほとんどの製品は、コストや機能性を追求したEVAや合成ゴムなどの石油系素材で作られています。
その5〜10%はリサイクルされ、残りの90〜95%は廃棄されるのですが、その廃棄のうちの約90%が埋め立てにより処理されます。恐ろしいことに、石油系の素材は土に還ることができず、1000年近く土の中にとどまることになります。さらにそれらは、地中から熱を発して有害なガスを発生させ、地球温暖化や光化学スモッグの原因になっています。
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──アパレルだけではなく、スニーカーもかなり重たい課題を抱えているんですね。
アパレルは、リサイクルやオーガニックコットン、ヴィーガンなどの選択肢が増えつつありますが、スニーカーに関しては、各社まだまだサステナブルなアプローチは手探りの状態です。
アッパーはそれらの素材を使用すれば良いのですが、一番やっかいなのはソール。もちろん天然ゴムを使うというのもありますが、重くて履きにくく、磨耗も早いので買い替えサイクルも増してしまう。結局サステナブルではないんですよね。リサイクルも増えていますが、膨大な手間や人手、コストがかかりますし、それで年間250憶足作るというのは現実的ではありません。
──今回新たに開発されたソールは、その問題を解決することができるんですか。
われわれの開発した素材は、100%天然由来の成分でつくられているため土に還すことができます。さらに、グリップ性などの機能を一般的なEVAや合成ゴムより高め、軽量化を実現しているので、第3の道になり得ると考えています。
天然ゴムを発泡させる技術を用いているのですが、これは15年の開発期間を経て生み出した特殊な製法です。これまで、ゴム素材を発泡させるには石油系、または人工的な薬品が必要といわれていましたが、一部の自然鉱物で発泡させることに成功しました。この自然科学による技術は、現在PCT国際特許出願中です。