──ビジュアルがいわゆるサステナブル系のブランドとは違いますね。
サステナビリティを全開にした打ち出しは、自分たちらしくないと考えています。我々は高いクリエイティビティをキーにアパレルを展開しているので、デザインやアート的な側面を大切にしています。また、直接的なメッセージは、環境意識の高い人だけにしか届かず、結局は社会的なインパクトを出しにくい、という側面もあるのではないかと。
クールで洒落ているプロダクトが実はサステナブル、という方が自分たちもユーザーも心地よいのではないかと思います。次世代のものづくりは、「ソーシャル」を強く意識したミッションドリブンに、「クリエイティビティ」「サステナビリティ」「サイエンス」という4つの要素が備わっているのが理想だと考えています。
──もう少し詳しく次世代のものづくりについて教えてください。
ファッション業界(機能重視のブランドを除く)では通常、クリエイティビティを最も重視しており、デザインがクールかどうかでユーザーの支持を集めてきました。ところが昨今、クールの定義が変わってきた。より地球に優しかったり、社会的な意義があったりするものがクールとされるように、サステナビリティやトレーサビリティへの配慮も選ぶ際の基準になっています。
自分の着ているものが地球や社会にとって良いものの方がいいに決まっているので、これは本当に素晴らしいことです。
とはいえ、そうしたメッセージが強すぎると、ファッションとしての魅力が低くなりがちです。クリエイティビティとのバランスをどうとっていくのか。これに加え、最新の技術を駆使したサイエンスがあると、より独自性を打ち出しやすくなります。また、最初からグローバルを見据えてビジネスモデルを構築することも必要です。
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──グローバルを見据えたビジネスモデルとはどのようなものですか?
世界には、貧困で靴を履けない子供が3億人いると言われています。多くの子供たちが裸足で飛び回って遊んでいますが、怪我による破傷風や寄生虫病の感染などの問題が深刻化しています。GENNでは、売上の一部で貧困地域に工場を作り、技術指導を行い、地域雇用を生み出しながら、靴のない子供たちに安価で靴を届けることを目標としています。