食&酒

2025.03.12 15:15

都内で続々開店! シルクロードの味が楽しめるウイグル料理店探訪記

東京・上野のウイグル料理店「シープマン」。異国情緒あふれる店内でウイグル人歌手の音楽が楽しめる

ここ数年、都内でよく目につく「ガチ中華」のジャンルに、ハラール中華(清真菜)モンゴル料理など、中国の黄河流域からシルクロードにつながる西北地域の料理がある。なかでもこのところ増えているのがウイグル料理店だ。

日本にウイグル料理が現れたのは、2010年代始めに東京と大阪にオープンした「シルクロードタリム」(新宿区西新宿3-15-8、2010年5月17日開店)と「シルクロードムカーム」(大阪市中央区道頓堀2-2-8、2012年11月18日開店)からだろう。

東京・新宿のウイグル料理店「シルクロードタリム」は2010年オープンの老舗
東京・新宿のウイグル料理店「シルクロードタリム」は2010年オープンの老舗

それ以後しばらく新たな出店は少なかったのだが、ここ1、2年で急に増え始めているのだ。それらの店の特徴は、現地の料理を提供するだけでなく、異国情緒たっぷりの内装や、店によってはウイグルの音楽や舞踊を楽しめることだ。

今年1月7日に東京の板橋区成増にオープンしたウイグル料理店「ドパム」(練馬区旭町3-26-2)では、オーナーのシャクラート・ヤーセンさんが都内在住のウイグル人仲間と夜ごとライブ演奏を行っている。

東京の板橋区成増のウイグル料理店「ドパム」。店名の「ドパム」は帽子の意味だそう
東京の板橋区成増のウイグル料理店「ドパム」。店名の「ドパム」は帽子の意味だそう

実は、彼はウイグルでは有名な音楽家である。上海音楽学院でピアノや民族楽器を学んだのち、ウルムチにある新疆芸術学院で教鞭をとっていたという。

シャクラート・ヤーセン(肖克来提·亚森)さんは1985年生まれの中国の作曲家で演奏家。オーケストラ作品もあるそうで、彼の作品の一部はYouTubeでも聴くことができる
シャクラート・ヤーセン(肖克来提·亚森)さんは1985年生まれの中国の作曲家で演奏家。オーケストラ作品もあるそうで、彼の作品の一部はYouTubeでも聴くことができる
来店したウイグル人一家とシャクラートさん
来店したウイグル人一家とシャクラートさん

筆者は1月中旬に初めて訪ねたのだが、すぐにシャクラートさんとは打ち解けることができた。それには理由があった。

前述の大阪難波にある「シルクロードムカーム」とその姉妹店「トルファン」(大阪市中央区難波1-5-8)という2軒のウイグル料理店を何度か訪ねたことがあり、ウイグル人オーナーのことを知っていたからだ。

実は、そのオーナーの父親がウルムチにある新疆芸術学院の学長で、シャクラートさんはその教え子だったのだ。当然、彼は大阪のオーナーや夫人をよく知っており、筆者は歓待されたのだった。

その日、彼の友人のウイグル人一家も来店していた。2人の子供と夫婦で、父親の男性はシャクラートさんと演奏を一緒にすることもあるそうだ。お子さんの兄と妹は日本語をよく話すので、一家と大皿のウイグルの鶏料理「ダーパンジー(中国名「大盤鶏」)」を囲んで話をしているうちに、ご相伴に与ることになってしまった。心温まるひとときだった。

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文・写真=中村正人

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