さらに、ウイグルが観光地として人気を集める理由については、次のようにも彼女は続ける。
「バザールなど伝統的なウイグルの街並みが残るカシュガルの旧市街に真夏には表面温度が80度を超える火焔山のあるトルファン、その周辺はブドウの産地では美味しいワインが造られています。
そのほかスウェーデンの探検家のスヴェン・ヘディンの旅行記で知られるタクラマカン砂漠や『世界の屋根』と称されるパミール高原、カザフスタン国境近くにあり草原が広がるサリム湖やナラティ草原など、言い出したらキリがないほどたくさんあります」

中国の国内旅行ブームがその土地の食を全国に広めるという話は、若い旅行者に人気の雲南料理のケースがよく知られているが、ウイグル料理でも同じことがいえそうだ。
ハスエさんと話をしていると「ウイグル人は明るくオープンマインドで、コミュニケーション能力が高い」というのは本当だと思う。彼らは顔だちからして明らかに東アジアの人とは違い、笑顔には愛嬌がある。
すでに何度か述べたことだが、今日のガチ中華は中国の食のトレンドがそのまま持ち込まれていることに特徴がある。顧客の多くが在日中国人である以上、現地の流行が東京にも反映されているのだ。
さらに言うと、モンゴル料理のときも同じこと書いたが、中国で少数民族として生きてきた彼らは、日本に来ても日本人の社会にうまく適応することで商売上有利に働くところが大きいと思う。それがひと目でわかるのは、店に置かれたメニューである。
基本的にウイグル料理店のメニューは日本人仕様のデザインでつくられている。彼らはこの国では日本人を相手にすることがビジネスのために必要であることを承知している。多くのガチ中華の店が中国のデザインのテンプレであるのとは違うのである。
そして、もう1つ興味深い発見があった。これまで訪ねたウイグル料理店の厨房には、ウズベキスタン人がけっこういることである。彼らに聞くと、ウイグルの料理と隣国ウズベキスタンの料理は「ほぼ一緒」なのだそうだ。
今回紹介したウイグル料理店は、夜は予約なしでは入れない店がほとんどだ。日本語対応はしっかりしているので、事前に席を確保しておけば安心して楽しめると思う。