欧州

2025.02.01 09:00

新システム「スフェーラ」に北朝鮮版ブーク ロシア、ウクライナの猛襲で防空強化に躍起

ロシア軍のパーンツィリ-SM自走式防空システム。2020年7月、ロシア・モスクワ(Dmitry Shchukin / Shutterstock.com)

オランダのOSINT(オープンソース・インテリジェンス)サイト「Oryx(オリックス)」によると、ロシアの地対空ミサイルシステムの損害数(撃破、損傷、遺棄、鹵獲の合計)は300基ほどにのぼる。ウクライナ当局が主張している損害数はこれよりもはるかに多い。いずれにせよ、こうした損害が一因で、ロシアは引き続き前線部隊を守りつつ国内の施設にも十分なカバーを提供するのが難しくなってきている。

防空システムの不足に追い打ちをかけているのが、ウクライナが用いるミサイルやドローンの射程が長くなっていることだ。ウクライナは昨年末、米国製ATACMS戦術弾道ミサイルと英仏製ストームシャドー/SCALP-EG巡航ミサイルをロシア国内の目標に対して使用する許可を供与国側から得た。

ウクライナのミサイルやドローンが届く範囲が拡大すると、ロシアは守る必要のある目標候補が増えるため、防空リソースがますます逼迫することになる。ウクライナはさらに、国産のミサイルやドローンの生産も強化している。

もうひとつの課題は、ロシアの防空システムはソ連時代の技術に依存したものが多いということだ。軍事技術一般に言えるように、防空システムも攻撃してくる兵器との「追いつ追われつ」の開発競争にさらされており、新型ミサイルは旧来の防空システムを回避するように設計される。

そのため、ウクライナの最新のミサイルやドローンに対するロシアのソ連時代にさかのぼる防空システムの有効性には限界がある。しかも、ウクライナの革新的な産業基盤はドローンやミサイルの対応能力や有効性を向上させ続けているため、ロシアの防御はますます大きな難題に直面している。

ロシアによる防空強化の試み

従来の防空アセットにこうした問題があるため、ロシアはウクライナによる攻撃で多くを占めるドローンを主なターゲットに、新しいシステムの開発と実戦配備を急いでいる。

そのひとつが、ロシアの国営複合企業ロステック傘下のチェリャビンスク無線機工場「パリョート」が開発しているドローン探知・制圧システム「スフェーラ」だ。この電子戦(EW)システムは民間地域をドローンの攻撃から守るためのもので、数平方kmの広さをカバーできると言われる
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翻訳・編集=江戸伸禎

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