ロシアは国内の施設をウクライナによる空からの攻撃から守ろうと腐心している。しかし、攻撃目標にされる可能性のある施設はあまりに多いため、現在の防空能力ではカバーしきれない。そこで、増え続けるウクライナの攻撃に対抗する代替策を模索している。
ロシアの防空システムの現状と課題
ロシアの大半の軍事技術に当てはまることだが、ロシアの防空兵器類も先進的な現代兵器と、改良した旧ソ連製兵器を組み合わせた構成になっている。ソ連は冷戦期に、西側の航空機に対抗する過程で防空に関する広範な専門知識や技術を獲得した。こんにちのロシアの防空体制はそれを受け継ぎつつ、多層的なアプローチを採っている。S-500「プロメテーイ」のような高度な長距離システムは、極超音速ミサイルを迎撃したり、地球低軌道衛星を攻撃したりする能力をもつ。同じく高度なシステムであるS-400「トリウームフ」は、航空機やドローン、弾道ミサイルなど、最大400km離れた目標を迎撃可能とされる。これらをS-300シリーズ、Buk(ブーク)、Tor(トール)といった旧ソ連で開発されたシステムの改良版が補完し、中距離から短距離の機動的な対空防御を提供している。これらのシステムを組み合わせることで、広範な空中脅威に対する重層的な防空網がつくり出される。
各種の防空システムを揃えていながら、ロシアは現在、その深刻な不足に直面している。ロシアはこれまで、防空システムをウクライナやロシアの一部にいる前線部隊に優先的に配備してきた。だが、3年近くにわたって激戦が続く1000kmかそこらの前線をカバーすることが求められてきた結果、防空システムの損害もかさんでいる。