心理的なドローン戦
これまでに起こったドローンへの投降は、偵察ドローンと、投降を望む軍人が偶然遭遇した結果だったようだ。ドローンは、敵陣上空から投降勧告ビラも散布している。こうしたビラの散布は1870年、普仏戦争のパリ包囲戦で気球から行われたのが始まりだ。現代版の投降勧告ビラにはQRコードがついていて、投降を手配するための安全な通信へのリンクも含まれるかもしれない。ウクライナはロシア軍人向けに「私は生きたい」というホットラインも開設しており、1日に200件以上の連絡があるという。
The Russian occupier held up a Ukrainian leaflet calling for surrender and was very offended by the phrase that while he is fighting, his wife in Russia is being fucked by a kadyrivets😄 pic.twitter.com/HeUZpMOioZ
— Devana 🇺🇦 (@DevanaUkraine) August 27, 2023
最新の動画からは、ウクライナ側がロシア軍人からの連絡を待つのでなく、ドローンをより積極的で組織的に用いて投降を促し、受け入れていることがうかがえる。スピーカーとマイクを搭載したドローンは、敵陣上空を飛んで投降勧告のメッセージをただ放送するだけでなく、それに応じたい敵軍人と双方向のやり取りもできる。
敵ドローンが常に存在することは、兵士にとって非常に大きな心理的負担になり得る。擲弾(てきだん)投下型のドローンが、同じ軍人を死亡が確認されるまで繰り返し爆撃している動画はたくさんある。FPVドローンが近づいてくると、銃で自分を撃つロシア軍人の姿を捉えた動画も増えている。ドローンに延々と追い回され、ゆっくりと出血しながら死んでいくくらいなら、みずからの一撃でひと思いに終わりにしたいという考えなのだろう。自分は間もなく死ぬと思っていた軍人が、安全に捕虜になれるとわかったときの安堵感は相当なものに違いない。
大砲の弾幕射撃に見舞われたり、有人航空機から攻撃されたりした軍人は、たとえある時点で状況が絶望的だと気づいても、投降することはかなわない。ドローンでは違う。ドローンの攻撃を受けた軍人は、立ち上がって白旗を降ったり手を上げたりでき、そうした身振り手振りが、攻撃するかしないかを選択する敵側に見えていることもわかっている。ロシア軍人は、安全に投降できるという合理的な期待をもてれば、そうした行動をとるだろう。投降すれば受け入れてもらえるという、この合理的な期待を生み出すことが決定的に重要だ。