さらに、英国とフランスから射程250km仕様の空中発射型ストームシャドー/SCALP-EG巡航ミサイルも供与されているほか、米国からはいくつかのタイプの地上発射型ATACMS弾道ミサイルを受け取っている。それには、210kg強の単一弾頭を搭載するM48型(射程270km)かM57型(射程300m)も含まれていた可能性がある。M48やM57は、港に停泊している艦艇を攻撃できるほどの命中精度があるのかもしれない。
ツィクロンのほかに、黒海艦隊の掃海艇「コブロベツ」も撃沈したと伝えられる今回の攻撃には、M48やM57が使われたもようだ。ウクライナは昨年秋と今年3月の少なくとも2回、ATACMSを少なくとも120発超取得し、ロシア軍の飛行場や防空システム、野外に集合している部隊、海軍基地などに対する攻撃に用いている。
ATACMSに対してロシア側の防空システムは無力ぶりをさらけ出している。これは、黒海艦隊の残りの艦艇を守るのに苦慮するロシア海軍の指揮官たちにとっても由々しい事態だ。
英スコットランドにあるセントアンドルーズ大学のフィリップス・オブライエン教授(戦略研究)は「ATACMSでセバストポリのロシアの軍艦も破壊できるのだとすれば、この基地はロシアにとってほとんど使い物にならなくなるのではないか」との見解を示している。ロシア海軍の指揮官たちは、生き残っている艦艇をすべてATACMSの射程圏外のロシア南部の港に引き揚げざるを得なくなるかもしれない。
もっとも、ロシア南部の港もウクライナの長距離ドローンなら届くので、必ずしも安全ではない。それでもロシア軍の防空システムにとっては、ATACMSよりはドローンのほうがまだ迎撃しやすいだろう。脅威がドローンだけなら、黒海艦隊の残存艦はATACMSの攻撃にさらされる状態にある場合よりも、少しは長く持ちこたえられるかもしれない。
(forbes.com 原文)