欧州

2024.05.20 10:00

ウクライナ軍、東部チャシウヤールでもロ軍の進撃阻止 潤沢な砲弾で突撃部隊を撃滅

スウェーデン製のアーチャー自走榴弾砲。2024年1月、ウクライナで(Dmytro Larin / Shutterstock.com)

スウェーデン製のアーチャー自走榴弾砲。2024年1月、ウクライナで(Dmytro Larin / Shutterstock.com)

4月上旬、ウクライナ軍は危機に瀕していた。米議会ではウクライナの戦争努力を支援する610億ドル(約9兆5000億円)近くの予算案が依然として滞り、国内では多数の新兵を補充するための喫緊の改正動員法案がたなざらしになっていた。

人員が不足し、米国からの弾薬も枯渇したウクライナ軍は、2022年2月にロシアの全面侵攻が始まってから最も弱体化していた。それを知ったロシア軍は、ウクライナの1000kmにおよぶ前線の複数の方面で攻勢に出た。

それから1カ月後、米国からの軍需物資が再びウクライナに届くようになった。動員法も成立して発効し、新兵の訓練や新たな旅団の編成が進められている。

ウクライナの命運は好転しつつある。ウクライナ東部ドネツク州のチャシウヤールほど、それが明らかな場所はない。ロシアの支配下にあるドネツク市の西にあり、かつて鉱工業で栄えたチャシウヤールは、ロシア軍によるこの方面の攻勢で主目標になっている都市だ。

当初、ロシア軍の機甲部隊はチャシウヤールの北と南から着実に前進し、歩兵部隊は、市の東端を南北に流れる運河の東側にあり、露出した格好になっているため最も脆弱な地区、通称「運河地区」に対する威力偵察を繰り返した。

そのころ、チャシウヤールを守るウクライナ側の防御は、もともと手薄だったものがさらに薄くなっていた。運河地区を守備していた第67独立機械化旅団の司令部に深刻な不手際があったことが監察で確認され、ウクライナ国防省は4月中旬、この旅団を引き下げて大部分を解散させたからだ。

第67旅団が抜けた穴を埋めるため、第56独立機械化旅団や第41独立機械化旅団、第5独立強襲旅団の部隊が急派されたほか、ドローン(無人機)部隊も増援に送られた。

しかし、その間も現地ではロシア軍のSu-25攻撃機が前線のすぐ上空を飛び回り、防空ミサイルを使い果たしたウクライナ軍部隊に向けてロケット弾などを撃ち込んでいた。地上ではロシア軍の空挺部隊がチャシウヤールの北と南から前進を続け、ウクライナ軍の守備隊は包囲されかねない情勢だった。

ロシア軍がチャシウヤールを奪取するのと、現地のウクライナ軍に米国からの弾薬が届くのと、どちらが早いかの競争だった。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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