5月1日かその前日、クバニ付近の野外に大勢のロシア兵らが堂々と集まっていたのも、そうした安心感からだったのだろう。もしかすると数百人いたかもしれない兵士らは、訓練のために集合していたようだ。
だが、ロシア軍にとって問題になるものがあった。米国からウクライナに供与されたATACMS戦術弾道ミサイルである。精密誘導されるこのミサイルはモデルによっては射程が300kmに達し、内蔵している擲弾(てきだん)サイズの子弾を数百個から1000個近くばらまく。
ロシア兵らが白昼、クバニ付近の原っぱを公然とうろつく様子は、ウクライナ軍のドローン(無人機)によってかなり高い上空から監視されていた。そこに、重量2tのATACMSが4発、猛スピードで飛来した。1発は起爆しなかったが、3発は上空で炸裂し、致死的な子弾が飛散した。3発はそれぞれ直径340mの円状のエリア(約10ha)を、ほとんど逃げ場所のないキルゾーンに変えた。
Seems like 🇺🇦did another ATACMS strike near Kuban, Luhansk.
Action starts at 03:50. A dud and 3 hits within a minute. pic.twitter.com/aGP4cWKY07 — JB Schneider (@JohnB_Schneider) May 1, 2024
ATACMSを用いた今回の攻撃は、一度の攻撃としてはこの戦争で過去最多の死傷者を出したもののひとつになった可能性がある。それはまた、ロシア軍の指揮官たちによる備えのずさんさもあらわにした。彼らは、このような攻撃が最近可能になっていたこと、さらには実施される可能性も高いことがわかっていたはずだ。米国からATACMSを取得し、それによってロシア軍の脆弱な後方地域をたたくことは、ここ数カ月、ウクライナ側の軍事上の最優先事項のひとつだったからだ。
ウクライナはこの強力なミサイルの供与を米国に繰り返し求めていた。米国は遅ればせながら、それに応じた。